密輸コウモリも取引「ペット輸入大国」日本の闇 野生生物が街中に入ると新興感染症招く恐れも

東洋経済オンライン / 2020年6月12日 17時40分

本来、野生生物とともにいるマダニが、野生生物が街中に出没することにより、野生生物から離れ、人間の生活圏に入る。そうしてマダニの体内にいたウイルスが人間にとりつく機会も増えていく。かつてペットとして人気を博したアライグマは、現在、新たな危険をつくり出している、ともいえる。

■生息地から遠い日本でペットとして飼う問題

アライグマの問題は、私たちは野生生物が未知の病原体を保有している危険性を認識しなければいけない、ということを示している。では、そうした感染症をもたらす危険がなければ、遠い原産地から連れてこられたペットを飼うのはOKなのだろうか。

今年3月、私が尊敬していた1人の生態学者が病死した。日本のカワウソ研究の第一人者で元東京農業大学教授、ヤマザキ動物看護大学名誉教授の安藤元一さん。69歳だった。

日本のペットブームについて考えるとき、私は安藤さんの悲しそうな顔が忘れられない。2018年秋、安藤さんは「今、日本ではカワウソを飼うのが大変なブームになっているんです」と話し、「日本はニホンカワウソを絶滅させてしまった。その日本で、今度は東南アジアの生息地から連れてこられたコツメカワウソをペットとして飼うのはいかがなものか」と断じた。

環境省は2012年8月、ニホンカワウソを絶滅種とした。安藤さんは1970年代、カワウソ調査法の確立といった基礎研究を行い、生息状況調査を行った。過去の新聞記事や文献を分析し、日本人がこれまでカワウソとどのような関わりをもってきたかを調べた。著書の『ニホンカワウソ』(2008年初版、東京大学出版会)は、1950年代までは日本人にとってごく身近な生き物だったカワウソを紹介している。例えば、各地にいまでも残る「獺越」(おそごえ)という地名は、カワウソが山を越えるという意味だという。カワウソは10キロメートル以上も山中を歩いて別の水系に移動することで知られた。

また、1980~1990年代には、安藤さんは韓国でニホンカワウソの“親戚筋”ともいわれるユーラシアカワウソの保護に貢献した。韓国南部の慶南大学校(昌原市)で教鞭をとった際に、海岸でカワウソの糞を発見したのがきっかけという。韓国の研究者とともに生息状況調査を始め、それが韓国国内での保護の機運となった。ユーラシアカワウソの保護は成功し、現在は運が良ければ姿を見られる親水公園もある。

世界には現在、13種のカワウソが生息する。TRAFFICは今回の調査に先立って、2018年の10月、カワウソの日本への密輸について調査を行い、報告書を出した。それによると、2000~2017年に計52頭が日本の税関で押収された。すべてタイから輸出され、タイでは1頭3400円で買い取られ、日本国内では100万円以上で売買されていた。

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