ベビーシッターが21年見続けたある家族との絆 小学2年生で「サービス休止」を伝えられたが

東洋経済オンライン / 2020年6月17日 10時0分

それでも、勝也くんは「お姉ちゃんに会いたい」とつねに思っていたようで、勝也くんの母親も気遣ってくれて学校の行事のたびに明子さんに連絡をくれ、そのたびに勝也くん家族に会いに行き、家族同然の交流を続けていました。

ところが、ある日、明子さんの元へ衝撃的な連絡が入ります。

勝也くんの母親が急死してしまったのです。勝也くんが小学校6年生の秋でした。この日から、独りっ子の勝也くんとお父さんの2人暮らしが始まったのです。

「もし具合を悪くしていたのなら、なぜ言ってくれなかったのか、なぜそういうときこそ呼んでくれなかったのか……」と明子さんは今でも時折口にしますから、当時は随分傷つき葛藤していたはずです。

■勝也のためにも来てほしい

勝也くんの母親が亡くなって少し経った頃、「明子さん、うちの子はもう小6で大きいんですが、僕が出張で帰宅できないときに、来てはもらえないでしょうか」という連絡が今度は父親からありました。

「勝也は母親っ子だったので気持ちも落ち着かないと思いますし、思春期になってきたせいか、僕としゃべろうとしないんですよ。外食も一緒に行きたがらないし。でも明子さんにはしゃべるんですよね。僕もなるべく仕事を早く切り上げて家で一緒に息子と飯を食うようにはしてるんですが、何しろ僕の作る飯は、肉焼くくらいの男飯で栄養も心配になりますし。なので、勝也のためにも来てあげてほしいんです」

この頃、父親の姉、つまり勝也くんの叔母が時々様子を見に来ていたそうですが、子どもが苦手な方だったそうで、勝也くんも懐かず、そのうち叔母は来なくなってしまったそうです。

明子さんからしたら断る理由なんてありません。その日以来、勝也くんが家で1人過ごさなければいけない日には、通常サービスでは行わない、宿泊シッターを開始。

この頃勝也くんは中学受験を迎えていました。

母親が突然亡くなり、傷心している勝也くんを思って「中学受験は無理しなくてもいいのではないか」と父親と話し合った結果、意見が一致したので、勝也くんに話をすると、「ママとの約束だから」とひとこと残し、受験勉強を頑張る勝也くん。父親と共にハラハラと見守る明子さんをよそに、勝也くんは無事中学受験をクリアして入学。ママとの約束を果たしたのです。

勝也くんが中学に上がる際には、父親は、「子どもも中学生になればもう1人でいても大丈夫だろう」と、小学校卒業とともにシッターの卒業を考えていたそうですが、勝也くんは父親に「お姉ちゃんはいつ来るの?」といつも聞いていたと言います。父親もなかなか“卒業”と言えず、勝也くんの気持ちを優先してサービスの続行を決断。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング