収入ゼロでも「生活保護は恥ずかしい」男の心理 コロナの影響で「日雇い労働」の仕事を失った

東洋経済オンライン / 2020年6月26日 7時30分

そもそもヤスユキさんの働かされ方は違法の可能性が高い。ヤスユキさんは毎日違う現場に派遣されるなど実態は派遣労働者に近い。しかし、建設業の労働者派遣は法律で禁じられている。表向きには請負を装っているのだとすれば、「偽装請負」である。

話は少しずれるが、ヤスユキさんによると、東京の現場の質は低いという。「住宅のリフォームなんかでは、傾きがないことを確認するためにビー玉を床に置くのですが、そのビー玉が転がってしまうこともある。誤って大黒柱を切ってしまったなんてこともあります」と話す。

日雇い労働者だから質が低いという問題ではない。未経験者もベテランも一緒くたにして違法に買いたたくのだから「安かろう、悪かろう」になるのは当然のことだ。

思ったよりも稼げないと知ったヤスユキさんは、昼も夜も仕事を入れた。午前8時ごろから夕方まで働き、その日の深夜から翌朝早朝まで別の現場で働くのだ。派遣先は遠方のこともあり、アパートは借りずにネットカフェで仮眠をとった。そのほうが効率的だと考えたのだ。40万円近く稼げる月もあったが、ダブルワークは体力的に厳しく、ならせば月収は20万円ほど。結局ネットカフェ暮らしは割高となり、“家計”を圧迫した。

さらに東京に来て間もなく喘息を発症。国民健康保険料を滞納していたので、病院では治療費として約10万円を請求された。その後はだましだまし市販薬を服用してきたが、昨年末に症状が悪化。発作を抑えるために1本1000円近くする酸素スプレーなどを1日に何本も使ったうえ、現場が年末年始の休暇に入ったこともあり、あっという間に所持金が底をついた。

そして、初めての野宿を経験。ヤスユキさんは恥ずかしくて段ボールを拾い集めることができなかったという。「酔いつぶれたサラリーマンに見えるよう」公園の木の陰に横たわったが、寒さで一睡もできなかった。カップラーメン1つ買えないひもじさと、動物のものか、人間のものかわからないアンモニアの臭いを、今も鮮明に覚えている。

■なぜ生活保護を利用しないのか

このときに知り合った支援団体の助けもあり、路上生活からは脱することができたが、今度はこのコロナ禍である。次第に仕事が減り、節約のためにネットカフェの無料のソフトクリームで飢えをしのいだり、現場まで往復2時間かけて徒歩で通ったりしたが、4月中旬、ネットカフェの休業により住まいを失った。

当時の心境をヤスユキさんは「『死んでくれ』と言われているようでした。このままでは本当に命を落とすと思った」と振り返る。

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