給与水準低下でこれから「家賃デフレ」が進む 民泊の賃貸転換も圧迫し、資産バブル崩壊も

東洋経済オンライン / 2020年7月10日 7時10分

さらに、トレンド項②(2018年10月以降)は、この時期からはトレンド項①の考察とは逆に所定内給与の上昇率に対して「家賃」の上昇率がやや高くなっていることから、このギャップを埋めるために用いた。

この時期から「家賃」が持ち上がる理由を特定することは困難だが、筆者は「民泊需要」が背景にあるのではないかとみている。2018年6月に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、貸家を民泊に転換する動きが増加した。つまり、「民泊」という新しい需要が生じたことによって賃貸市場の需給がタイト化したり、収益性の観点から一般的に投資利回りの高い「民泊」とフェアな水準まで「家賃」が引き上げられたりする例があった可能性がある。

2つのトレンド項の背景にある要因を完全に突き止めることは困難だが、今回作成した「家賃」の変動を「所定内給与」と「2つのトレンド項」を用いて説明するモデルの決定係数は0.79となっている。つまり、これで約8割が説明できる。それぞれの変数の説明力も統計的に非常に良好である。

推計結果によると、所定内給与が1%ポイント変化すると、0.74%ポイントだけ「家賃」が変化するという関係があることがわかる。リーマンショック前後で所定内給与は前年同月比約1.5%ポイントのマイナス(2008年1月の同プラス0.6%から、2009年7月のマイナス0.9%までの変化)となったことを考慮し、今回のコロナショック前後でも同様の変化があったと仮定すれば、「家賃」は約マイナス1.1%ポイント(マイナス1.5%ポイント×0.748)となることが予想される。

なお、トレンド項①についても説明力が高く、「家賃」に対して毎月約マイナス0.009%ポイントの低下圧力がかかっていることがわかる。これは年間で約マイナス0.11%ポイントの影響であり、じわじわと影響が強くなっている。トレンド項①が示す「家賃」の長期的な下落要因を特定することも重要な論点である。

■旅行需要の減少で「民泊」は「賃貸転換」

トレンド項②については、毎月0.045%ポイントの「家賃」の押し上げ効果があることが分かった。2018年10月以降の累計では「家賃」を0.8%ポイント押し上げてきたことから、無視できない要因である。

前述したように、筆者はこのトレンド項②は「民泊」の需要増加によってもたらされてきた「家賃」の上昇要因である可能性があると考えているが、「コロナ後」はインバウンド消費を中心とした旅行需要の急減による「民泊需要」の減少が「家賃」の下落要因になるかもしれない。

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