空港検疫「コロナ陽性じわり増」の先に待つ懸念 成田空港では時給2500円でPCR検査官を募集

東洋経済オンライン / 2020年7月13日 7時40分

検査の結果が出るのを待つ人への対応も課題だ。現在、結果を受けた人の過ごし方には3つの選択肢がある。

①自家用車で迎えに来てもらうなど公共交通機関を使わずに帰宅し、自宅で検査結果を待つ

②空港内の指定スペースで待機する

③政府指定のホテルに滞在する

の3つだ。感染を広げるリスクが低いのは②か③だが、利用できる人数には限りがある。

■人手は相当かかってしまう

例えば、③のホテル滞在を選択した場合、空港からバスに乗り込んで指定のホテルへ向かい、結果が出るまでに2泊するのが通常。6月中旬にベトナムから帰国した30代の日本人女性は、ホテル滞在時をこう振り返る。「ホテルに向かうバスの乗り降りには、防護服を着込んだ職員が付き添ってくれた。車内の座席を透明なビニールで覆い、運転席との間を仕切るなど、徹底的に対策がされている印象だった。ホテルでは、客同士が接触しないよう1人ずつ部屋に案内され、宿泊中は1日3食、部屋までお弁当を持ってきてもらえた」。話を聞く限り、かかる人手は相当なものだ。検査数が増えれば、こうした結果を待つ人向けの対応にも増員が必要となる。

入国者が増えれば感染が広がると懸念されるのは、PCR検査には能力的な限界があるからだ。PCR検査で陽性と出るのは検査対象の7割ほどで、検疫をすり抜けるケースが頻発する。北海道大学の西浦博教授らの研究チームが行った試算によると、感染率が1.0%の国(国民の100人に1人が感染している、感染が深刻な国のレベル)から1日当たり1000人が入国すれば、PCR検査と隔離による対策を行ったとしても、3カ月後には98.7%の確率で日本に大規模流行が起こるという。

ここでいう大規模流行とは、日本の3月半ば以降の状態を示す。この試算を受けて西浦氏は、「リスクを最小限に抑えるには、流行制御が明確な国と、ビジネス渡航など最小限の交流から始めることが大切だ」と語る。そのうえで、入国者から感染者が出たとしても行動歴の記録などで濃厚接触者を特定しやすくする仕組みの導入が必要だ。

経済社会活動を維持するうえで、往来を制限する鎖国のような状態をいつまでも続けるわけにはいかない。出入国の規制により、海外に拠点を持つ日本企業の多くが、駐在員の往来や、海外法人での経営判断などで難しい事態に直面している。海外旅行ができなければ、サービス業への打撃も甚大だ。だが、入国後の検疫能力に限界がある以上、安易な往来緩和はかえって国内の感染爆発を招きかねない。

『週刊東洋経済』7月18日号(7月13日発売)の特集は「コロナ徹底検証」です。

印南 志帆:東洋経済 記者

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