リニア「ルート変更」静岡知事が明かす発言の裏 JR東海社長への「あいまい対応」の理由も説明

東洋経済オンライン / 2020年7月13日 7時20分

ヤード整備を容認するのかという誤解すら招いたほどソフトに進んだ金子社長との会談に比べて今回の会談が白熱した理由については、「話の内容はどちらも同じ。JR東海の現場の人たちは条例の中身をよく知っているが、金子社長は条例を熟知していないことがちょっと話してすぐわかった。持ち帰って検討するというので、“どうぞ”となった」と知事は話し、ヤード整備を認めたかのような対応をした理由を明かした。

さらに、川勝知事との会談後、金子社長が当初5分の予定だったぶらさがり取材を3分で切り上げたことに言及し、「金子社長は“静岡県がヤード整備を認めず2027年の開業が無理になった”とおっしゃるつもりだったのでしょう。でも、私はそういうシナリオがあるのを知っていたから」と話し、会談の展開が金子社長に「静岡のせいで」という言質を与えないための雰囲気作りだったことを示唆した。

一方で、藤田次官については、「なにがなんでもやらせるという強い意志をお持ちになってきた。しかし、それは結論が出ているからできないときっぱりと申し上げないといけないので、こういう会談になった」と説明した。

今回の会談は川勝知事が準備工事を認めず、物別れに終わった形となったが、実は事態の打開に向け一歩前進した部分がある。それは、国交省と流域10市町の首長の直接対話が可能になったということである。これが会談の流れで出てきた思いつきの提案ということはないだろう。川勝知事の頭を飛び越えて各首長から個別に不安な点を聞き出し対策を講じることで、準備工事開始の糸口にしたいと考えているはずだ。

「大井川の水は重要なのでトンネル工事は認めない」ことで各首長の認識は一致しているが、水に影響を与えない準備工事であれば認める自治体が出てくる可能性もある。次官と知事の会談終了後、島田市の染谷絹代市長は「反対をする権限というか、理由を探すのが難しい。国交省からお話があればぜひ直接伺ってみたい」と話した。もっとも、国交省は昨年11月にも審議官が流域市町を訪ね、各首長と会談したが、目立った成果は上がらなかった。今回、首尾よく進む保証はどこにもない。

■知事は「ルート変更」の発言も

今回の会談では、川勝知事がリニアのルート変更について発言した点も注目される。知事は7月9日付日本経済新聞で鈴木敏夫・川根本町長の「流域市町でもルート変更を1つの案としてはどうかの意見がある」というコメントを引き合いに出したほか、10日の県議会危機管理くらし環境委員会で、「ルート変更も含めた交渉をするべき」という発言があったことも紹介した。

記者会見で知事は、「ルート変更は私の考えというよりも県議会で出てきた議論ということでご紹介した」と説明したが、「ルート変更の議論は表に出ていないだけでこれまでもあった」という。

一方の藤田次官は記者会見で、「ルート変更までには、ルートの決定、環境アセス、工事認可と、長いいろいろな議論がある。軽々しく議論するものではない」と一蹴した。

今のところ、JR東海も国交省もリニアの2027年開業という旗印は下ろしていない。しかし、もし間に合わないということが正式に発表されたら、新たな開業時期を含めた仕切り直しの議論において、静岡県がルート変更を検討の俎上に乗せるよう要求する可能性がある。

大坂 直樹:東洋経済 記者

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