ベンチャー投資家の極意「黄金の時間の買い方」 日本がシリコンバレーで情報がとれない理由

東洋経済オンライン / 2020年7月15日 8時10分

CVCでは、パナソニックも興味深い取り組みをしています。コンダクティブベンチャーズというCVCですが、パナソニックの名前がどこにもないのです。

幹部はもともと別の独立系ベンチャーキャピタルにいた人間で、その評判と人脈、目利きがメインの差別化要素になっています。むしろ、名前を出さないことで、大手企業に出資してもらったというブランドだけが欲しいベンチャーを排除することができます。企業名を入れないというのは、とてもいい選択だと思います。

■シリコンバレーにエース級人材を常駐させろ!

日本企業がCVCをやるのであれば、行うべきは、破壊的に事業を変えていくような分野への投資です。次の本業になるようなものをこそ、見つめなければならない。

アップルでさえ、10年周期でビジネスを進化させようとしています。そんな時代です。本業に対しても、インパクトのあることをやっていかないといけないのです。そのために投資を使うべきなのです。

お金があるからCVCを、とりあえずCVCを、などということをやっては本末転倒でKPIを間違えてしまうことになりかねません。

それなら、CVCの前にシリコンバレーの複数のベンチャーキャピタルに投資したほうがいいと私は思います。ベンチャーキャピタルが持っているベンチャー投資の情報を獲得していくことができるからです。

そしてベンチャーキャピタルが、どういうものなのかを理解する。どこにどんな人たちがいて、どんなことをしているのかを知る。こういうことはやるべきではない、こういう得意をこそ生かすべきだ、ということを認識し、学ぶ。

こうすることで、ベンチャーのエコシステムへのアクセスをつかむことができるかもしれません。インナーサークルやコミュニティーに入るための足がかりにすることができる可能性も出てくるでしょう。

そのために日本企業が行うべきことは、エース級の人材を今すぐ送り込み、できるだけ長く駐在させる、という戦略を取ることです。縁は引き継げないからです。

シリコンバレーでは、ニューヨークなど東海岸の大都市と違い、伝統的な日本企業の知名度はほとんどゼロです。消費者に直接製品を出していない限り、知られないのです。三菱も三井もほぼ誰も知らない。そうなると問われるのは、どの会社から来ているのか、ということではまったくありません。あくまで、個人の能力だということです。

テクノロジーとビジネスの両方に明るい人。本社の承認をすばやく得ることができる人。こうしたエース級がシリコンバレーに長く滞在し、幅広い人たちと話をすることによって、信頼できる身近な人と認められるのです。

バブルの時代とは違い、日本企業を一番手に考えてよい情報を提供しようとする海外の人はほとんどいないことに気づく必要があります。情報収集がうまくいかないからと、消去法的にCVCを作っても、お金があるというシグナルだけが流れて、逆に質の悪い情報が集まってきてしまったりするのは、そういうことです。

新型コロナの影響もあり、そうなれば、日本はますます世界の動向から取り残されてしまいます。日本企業が「時間を買う」ためには、シリコンバレーにエースを送り込んで、「質のよい新しい情報や技術の本業への取り込み」という本来の目的をかなえてもらいたいと思います。

山本 康正:DNX Ventures インダストリー パートナー

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