ドラマ制作の"黒子"を悩ませる劣悪すぎる実態 「制作部」前編:裏方を支える"何でも屋"集団

東洋経済オンライン / 2020年8月10日 7時35分

ドラマ制作の黒子的存在である「制作部」。その壮絶な労働実態とは?(写真:ABC/PIXTA)

ドラマの専門職として「制作部」という人たちがいるのをご存じだろうか。

「部」という字がついているが組織ではなく、職業の名前だ。ほぼすべての人はフリーランス。ひと言でいうと「撮影ができるためにすべきことは、全部する」のがお仕事だ。

ドラマの撮影現場が成り立っているのは、制作部と呼ばれる人たちが人知れず頑張っているから、と言っても過言ではない。

今回から始まる連載「テレビのミカタ」では、さまざまなテレビのプロたちはどんなお仕事をしているのか、そしてどんな問題に今、直面しているのか、を取材して「現場の声」をお届けしていきたい。

第1回目にご紹介するのが「ドラマの制作部」。アラフィフのベテラン制作部・Aさんと、30代半ばの制作部・Bさんに、制作部の想像を絶するほどブラックなお仕事の実態と、新型コロナ問題に揺れるドラマの撮影現場の実情を語ってもらった。

■撮影隊の中で唯一の総合職

「ドラマには『演出部』とか、技術関係や美術関係の専門職とか、いろんな専門職がいます。ある意味、ドラマの撮影隊は専門職の集団みたいなものです。撮影隊の中で唯一の総合職が『制作部』だと考えてもらえればわかりやすいと思います。ほかの専門職がやることになっている仕事以外は、すべて制作部の仕事ですね」とAさん。

Bさんが続ける。

「例えば、『ねえ、トイレどこ?』『ねえ、車どこに停める?』『ねえ、家燃やしちゃったんだけどどうしたらいい?』という全然違う質問が同時に来るのに、1人で一気に対応しなきゃいけないのが、制作部の仕事です。

僕は現場が好きだから続いていますが、離職率は驚異的に高いです。10人いても、1年後には1人残っているかどうか、くらいじゃないですかね。僕は今30代半ばですけれど、15年やっててまだ1人も下がいません。20代はほとんど続かないと思います」

本当に人手が足りなすぎて、「やりたい」と言えば誰でもすぐに入れる世界だという。

「育てる余裕がないので、タダ働きしてもらって仕事を覚えてもらっているのが現状です。正直誰でもいいんです、とりあえず。居酒屋で飲みの席でスカウトしている人もたくさんいます。技術や美術も辞めちゃう人は多いですが、制作部ほどではありません」と、Bさんは苦笑しながら話す。

そして驚くべきことに、ドラマの制作部の人々のギャラは、なんと60年間変わらず、一度も上がっていないという。実に昭和30年代から現在まで、業界で不文律のように定められたギャラ水準がそのまま踏襲されているというのだ。これにはさすがに、30年近くテレビ業界で働いている私も耳を疑った。

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