イソジンを買いに走った人に致命的に欠けた力 インフォデミックで情報の真価を見極める方法

東洋経済オンライン / 2020年8月13日 8時20分

新型コロナウイルス感染拡大による不安で、世の中の医療情報は錯綜しています(写真:metamorworks/PIXTA)

新型コロナウイルス感染拡大により、全世界の人々の社会生活や経済が大きな影響をうけています。そんな中、医療情報に関しても、多くの情報が錯綜するとともにあふれており、どれを信じてよいのか、誰を信じてよいのかと悩まされている声を頻繁に聞きます。

8月4日夕方にも、友人より「医者だからイソジンうがい薬を手に入れられないか」との問い合わせがありました。「10年以上イソジンうがい薬を処方したことはないよ。なぜ?」とたずねると、「大阪府の吉村洋文知事が、うそみたいな本当の話として、ポビドンヨードの入ったうがい薬がコロナの特効薬だとテレビで話していた」というのです。

「いや、そんなのは、デタラメだから信じないほうがいい」と返答してみたものの、気になってネットで調べると、すでにイソジンうがい薬は店頭から消え去り手に入らないとの記事が出回っていました。「○○が健康にいい」とテレビ番組で紹介されると、それがすぐに売り切れて店頭から消えるという既視感のある現象が起きていたのです。

■科学的根拠がなく、医学的な常識に合わない

わたしが「そんなのは、デタラメだから」と答えられたのには、次のような考察ができたからです。まず、医療情報はエビデンス(科学的根拠)の積み重ねの上に成り立っています。ですから、1つの情報について「科学的常識に合うか合わないか」で、ふるい分けられるのです。

加えて、それが「誰によって、どのような形で発せられたのか」をみます。さらに、その情報は「何を目的に発信されているか」を推測します。そのうえで、「科学的なエビデンスに基づいているものかどうか」、情報の内容を吟味することになります。

今回のイソジンうがい薬の件に当てはめてみると、当初の発表は医学的な常識と合いませんでした。2005年の『American Journal of Preventive Medicine』という学術雑誌に、京都大学川村孝教授(当時)らが、ポビドンヨードのうがいは、水でのうがいに比べてむしろ風邪にかかりやすくするという結果を報告しています。

そのことは、多くの臨床医の間で常識となっています。だから、これまでもポビドンヨード液を処方することはせず、他のうがい薬を処方してきましたし、水でうがいするだけで十分であることを伝えてきました。

川村氏の研究は、無作為にグループを分けてうがい液の効果を観察するという科学的にしっかりとした方法で行われており、アメリカの学術雑誌に発表されていることを踏まえても、信頼性が高いものです。通常医師は、このような科学的根拠を大切にして日常の臨床にあたっています。ただし、以前は正しいとされていた内容が、その後ひっくり返されることもあります。

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