送りバントを妄信する日本球界が気づかぬ現実 野球離れを加速させる「データ野球」の軽視姿勢

東洋経済オンライン / 2020年8月20日 13時30分

プロからアマチュアまで幅広く浸透している「送りバント」。しかし、その礼賛ぶりは日本球界の“遅れ”も表している(写真:時事通信)

今年のプロ野球は入場者数が制限され、相変わらず静かなスタジアムで淡々と試合が行われている。こうした中、テレビ中継では番組を盛り上げるためにいろいろな企画を行っている。

ある地上波局は、サブチャンネルで「セイバーメトリクスとは何だ?」というテーマで中継をした。セイバーメトリクス(SABRmetrics) とは、統計学に基づいた野球のデータ分析だ。

この番組では、野球解説者とセイバーメトリクスの専門家が試合展開とともに解説をしていた。走者が出てバントで送ろうとした場面では、専門家が「セイバー的には送りバントは勝ちにつながる作戦とはいえない」と指摘すると、解説者は「そうなんですか!」と驚いてみせた。

また、アナウンサーが「今日はOPS(後述)という特別のデータをご紹介しましょう。(阪神の)大山悠輔のOPSは1.000を超えています。これはすごい数字なんです」と補足していた。

■いつまで「セイバーメトリクスとは何だ?」なのか

筆者は「まだこんなことをやっているのか」と思った。

スポーツライターのビル・ジェイムズがセイバーメトリクスを考案したのは、もう40年以上も前だ。メジャーリーグ(MLB)ではセイバーメトリクスは野球記録のスタンダードになり、いくつかの指標はすでに陳腐化している。

しかし日本では、いまだに根付いていない。テレビの野球中継でセイバー系の指標が紹介されるのは、上記のような例を除き、ほとんどない。

スポーツ紙や一般紙は、相変わらず打率、本塁打、打点、防御率である。野球そのものは進化しているのに、それを語る言葉・数字は「昭和のまま」なのである。

これはメディアの知的怠惰というべきではないのか。日本野球は「ガラパゴス化」が目立っているが、とりわけ記録面ではそれが著しい。

野球は「数字のスポーツ」である。19世紀半ばには、すでに野球の記録方法が考案されていた。

早い時期から野球ではリーグ戦が行われてきた。1カ所ですべての試合を見ることが可能なトーナメントとは異なり、リーグ戦は複数の球場で同時に行われることが多い。そのデータを比較するために「野球記録」が発達した。

驚くべきことに、初期の段階でヘンリー・チャドウィックによって「打率」「防御率」が生まれている。以後、野球界は膨大な数字とともに発展した。

かつてアメリカでは4年に1度、マクミラン社から「ベースボールエンサイクロペディア」という記録集が発行されていた。19世紀後半以降、MLBの公式戦に1試合でも出場した選手の成績を網羅した記録集だ。

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