小田原の路面電車「64年ぶり里帰り」実現するか 長崎に移籍の車両、クラウドファンディングで

東洋経済オンライン / 2020年9月4日 7時20分

そこで、平井氏が譲渡の可能性について尋ねると、「古い車両なので、アスベスト(石綿)が使われている可能性があり、もし、使われていると移動は難しい」との回答だった。

その後、長崎でアスベスト調査が行われ、およそ1年が経過した今年3月初めに「アスベストは使われておらず、譲渡希望者は3月末までに、その意思表示をしてほしい」との連絡が来たという。

「譲渡の可能性は低いだろうと思っていたので、受け入れ場所など何も準備していなかった。しかも、新型コロナの影響で、人を集めて相談することもままならなかった」と、平井氏は当時を振り返る。

■保存場所をどうするか

そんな状況ではあったが、近隣の鉄道愛好家を中心に声がけし、集まったメンバー10名で里帰りプロジェクトが立ち上がった。

プロジェクト立ち上げ後、最初の大きな課題は保存場所の確保だった。受け入れの意思表示はしたものの、保存場所が決まらなければ、「難民」になってしまう。

まずは、小田原市に相談を持ちかけたが、「今回の件は時間的な制約があり、予算確保を含め、交渉の土台に乗せるのが難しかった」(平井氏)という。また、場所さえ確保できれば、どこでもいいというわけではなく、できればかつての路線沿いで、ある程度の人通りがあり、人の目に触れる場所でなければ保存する意味がなく、保存場所の選定は難航した。

悩んでいた時期に、救いの手を差し伸べてくれたのが、小田原が生誕の地である二宮尊徳(金次郎)をまつる報徳二宮神社の宮司、草山明久氏だった。同神社が運営するまちづくり会社「報徳仕法株式会社」が、昼は観光回遊と消費促進の拠点、夜は地元の3世代が交流する暮らしの拠点とする新施設の準備を、2021年2月のオープンを目指して進めており、その敷地の一角に202号車を設置することを了承してくれたのだ。

同施設は、かつて路面電車が走っていた国道1号に面する「箱根口」交差点付近に位置し、立地としても申し分ない。

草山氏は、この新施設について、「昼は観光客向けに地場産品の販売や、レストラン・カフェを運営し収入を確保する。夜は、共働き世帯がふつうになる中、子どもを中心に地域の人々が自然に集えるような食堂などを開くことで、3世代が交流する地域コミュニティーの場とする」とし、この2つの機能を同じ施設が担うことで、地域経済の循環と地域課題の解決を持続可能(SDGs)な方法で実現させることを目指すという。

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