事件から10年、尖閣沖「特攻漁船」船長の末路 突撃取材で明らかになった意外すぎる真実

東洋経済オンライン / 2020年9月7日 13時30分

沖縄・尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船に中国漁船が衝突する状況を記録した映像(写真:時事 国会に提出された動画より)

「日本の船から俺の船にぶつかってきたんだ! 俺の船からぶつかったのではない。それなのに、日本側はこっちからぶつかっていったと言い張って。日本の取調官の2人のいばり腐った態度はひどすぎた。威圧的で、怖かった」

沖縄県の尖閣諸島沖で、中国漁船が日本の海上保安庁の巡視船に体当たりした事件から、9月7日でちょうど10年になる。

事件発生の3カ月後、私は帰国した船長を追いかけ、彼の自宅で話を聞いている。その場でも、体当たりを仕掛けてきたのは日本の巡視船だった、と強く主張していた。

この事件を契機に、日中の国交が正常化してもずっと棚上げされていた尖閣諸島をめぐる領土問題が顕在化。2012年に日本が国有化してからは、中国の反発は一層激しくなった。

■船長は何を語ったのか

習近平政権に移行してから海洋進出を強化してきた中国は、今年4月、かねて埋め立て、軍事拠点化してきた南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島、西沙(パラセル)諸島に、新たな行政区「南沙区」「西沙区」を設置。尖閣諸島周辺海域には、同月14日から8月2日まで111日連続で中国公船が現れ、日本の領海に繰り返し侵入している。

しかも5月8日には、領海に侵入した4隻の中国公船のうち2隻が、日本の漁船を追いかけ回す“事件”も発生している。

緊張の続く尖閣諸島。そこに火をつけた10年前の事件。中国漁船の船長は逮捕・送検されたが、中国側の圧力もあって、拘留期間延期中の9月24日に那覇地検は処分保留で急遽、釈放している。「取調官の2人」とは、那覇地検の検事のことだ。

「とにかく、取り調べにあたったあの2人ときたら……」

当時の船長はトラウマを背負ったように、取り調べの話にこだわり、あからさまに嫌な顔をして、不機嫌になった。相当、気に食わなかったらしい。

「あの2人は、日本でもそのうち殴り殺されるんじゃないか。あの2人がひどいことをするから、中国と日本の関係も悪くなったんだ。両国の損失だよ」

そこまで言っていた。

■ガラリと変わった船長の暮らし

船長が暮らすのは、経済特区として知られる厦門(アモイ)から、車で北に2時間ほど行った福建省の港町だった。車も通れなくなるほどに建物が密集した路地を入った、石造りの3階建ての家。分厚い眼鏡に杖をついて歩く船長の母と、ショッキングピンクのスウェット上下を着込んだ妻に出迎えられて、2階の部屋に通された。

そこは20畳ほどのリビングスペースになっていて、隅にソファーセットが置かれていた。そこですぐに目についたのは、大型の薄型テレビの脇に飾られた大きな旗だった。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング