アメリカ同時テロと日本を繋ぐ"点と線"の追憶 19年前の9月、私がニューヨークで見た光景

東洋経済オンライン / 2020年9月11日 13時30分

アメリカ同時多発テロ直後のワールドトレードセンターの倒壊現場(写真:筆者撮影)

アメリカ同時多発テロ事件から19年になる。

その直後に入ったニューヨークの現場で、私は安倍晋三を見ている。在任日数が憲政史上最高を記録し、まもなく職を辞そうという今の日本の首相だ。

当時は第1次小泉純一郎内閣の官房副長官の職にあって、テロ事件後に訪米した小泉首相に帯同していた。航空機が突っ込み倒壊したワールドトレードセンター(WTC)の現場を、小泉が近くから視察するにあたって、その場所に先乗りして到着を待っていた。

日本の首相が来るとは知らずに、物々しい雰囲気に野次馬が集まる中で、ひょろりと詫びしそうに立っている姿が目にとまった。

この人物がのちに首相となり、“安倍一強”と呼ばれる体制の中で、連続在任日数が史上最高を記録するとは思いもしなかった。民主党(当時)から政権を奪還した安倍政権は7年と8カ月で幕を閉じるが、第1次もあわせると、この19年間のうち半分近く首相の座にいたことになる。

■グラウンド・ゼロで何を見たのか

先乗りした安倍のもとへ小泉が到着すると、並んで倒壊現場を見てまわり、そして「Missing」と書かれた無数の張り紙の掲げられた壁の前を通り過ぎていった。

「Missing」の張り紙には顔写真も添付されていた。WTCの倒壊と同時に行方不明になった人たちの家族が、ニューヨーク市内の至るところに貼ったものだ。

中には日本人のものもある。そこには日本語で、

「ありがとう。お母さんは幸福でしたよ」

と、書かれたものもあった。もう行方不明者を捜すというより、家族を偲ぶものに変わっていた。

湿ったゴミの焼ける臭いー―。私がニューヨークに入ったころには、WTCの建っていた場所からまだ煙が昇っているのが、マンハッタンの中心部近くからも見えた。ダウンタウンに近づくにつれ、そんな臭いが鼻を突くようになる。

高層ビルが縦に崩れたことによって、内部は石臼のような状態になり、救助に入った現場からは瓦礫と一緒にバラバラになった人の身体の一部が見つかる。しかも瓦礫の下に火がついたことで、蒸し焼きのような状態になっていた。倒壊現場では放水が続いていた。

現場周辺のショップでは、崩れた建物がまき散らした粉末状の残骸が押し寄せていた。陳列された衣類が真っ白にほこりまみれになっている。煙臭さにほこり臭さが交わる。

道路を清掃する作業員の姿もある。WTCにはアスベストが使われていたはずだからマスクをするように、と呼びかけるボランティアもいた。

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