今の40歳前後「非正規・未婚者」が抱く深い憂鬱 生活苦の「新しい中年クライシス」が起きている

東洋経済オンライン / 2020年9月22日 18時0分

すなわち、中年の後半期にこのような考えや反省を持ちがちな「中年クライシス」は、特に能力の高い人や恵まれた環境にいる人に多く発生する事象であると河合はみなした。換言すれば、「中年クライシス」はエリートないし準エリートに特有なことなのである。少なくともユングの時代はそうであった。

■「中年クライシス」がごく一般の人々にも

しかし時代は進み、ほとんどの人が義務教育と中等教育を受け、多くの人が高等教育を受ける時代になった今日においては、過去においてはエリート層に起こりがちであった「中年クライシス」が、ごく一般の人々にも及んできたのである。

確かに今の時代でも人々は、仕事、地位、財産、家族に深くコミットしているが、昔と異なってごく普通の人々でもこれらの活動をしながらも、人は何のために生きているのかとか、自分は何者なのか、自我を意識するとか反省するといった思いを抱くようになったのである。これこそが今日における「中年クライシス」を多くの人が体験する時代になっている証拠である。

なぜ日本において「中年クライシス」が顕著になったのか、2つの背景を述べておきたい。

1つは、戦前と戦後の一時期の日本は国民の所得は低く、人々は働くことによってその日暮らしに明け暮れせねばならない時代だったので、「人間とは」とか「自分とは」などを考える余裕がなかったことがある。しかし高度成長期以降に国民の所得も伸びて、ある程度豊かになり、「人間とは」「自分とは」を考え直す余裕ができたので、「中年クライシス」が発生する素地が誕生するようになった。

第2に、日本が格差社会に入ったことは確実で、貧富の格差、教育格差などあらゆる分野で格差の目立つ時代となった。中年層の間で経済的に恵まれていない人々の数が増大した。

これを筆者は、ここで述べてきた「人間とは」とか「自分とは」といった心の問題が中年に発生している「中年クライシス」とは別に、それこそ生活の苦しい中年が多く発生している事実を、これまで心理学者の主張してきた「中年クライシス」とは質の異なる「新しい中年クライシス」が発生していると主張したい。

「新しい中年クライシス」とは、若い時代に望む仕事に就くことができず、その不利さが中年期まで持ち越されてまともな収入のない人々の苦悩である。結婚もままならないといった状況にもある。

中年期には心の問題が生じ、あるいは精神上で苦しむ時期だが、究極の証拠としては中年の自殺が多いことがあげられる。拙著『中年格差』でも詳しく解説しているが、厚生労働省や警察庁の統計から読み解くと、40歳代、50歳代、60歳代という中年世代に自殺は多く、男女別に見ると男性のほうに目立つ。その主な理由は「勤務問題を含む経済・生活問題」「男女問題を含む家庭問題」が考えられる。

■「新しい中年クライシス」と生涯未婚の増加

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