支持率のみを求める政治は社会を繁栄させない バグだらけの認知能力が世論を作ることもある

東洋経済オンライン / 2020年9月25日 8時0分

人間が本質的に持つ認知バイアスや本能に関する書籍が、世界的なベストセラーになっている(写真:maroke/PIXTA)

昨年だったか、ある本を眺めていたら、「ほぉ、これは、新聞社やテレビ業界などで、あいつはできると評価される際の基準そのものだろう」と感心する記述があった。その記述は、世界中で大ベストセラーとなっている『ファクトフルネス』の中でハンス・ロスリングが挙げた、10の本能である。

1.分断本能 2.ネガティブ本能 3.直線本能 4.恐怖本能 5.過大視本能 6.パターン化本能 7.宿命本能 8.単純化本能 9.犯人捜し本能 10.焦り本能

■ドラマチックな世界を求める読者

ロスリングは、人間が世の中を事実とは異なる「ドラマチックな世界」にみようとする性向を持つ理由として、人にはこれら10の本能があるからであるとした。『ファクトフルネス』は、「ネガティブ本能――世界がどんどん悪くなっている」や「犯人捜し本能――だれかを責めれば物事は解決する」などの10の本能を抑え、人類が、世の中を正確に理解し、その正確な理解の上に物事を判断し、ビジョンを描き、社会を改善していく必要性とその可能性を説いた本である。そして、人類の素晴らしい進歩を信ずる自らを「ポシビリスト(可能主義者)」と呼んでいる。

彼が挙げた本能は、人間に認知上のバイアス(間違い)をもたらす本質的性質とも言える。だが、長年メディア界を眺めてきた身としては、人が持つこれらの本能に沿って、ドラマチックな世界を求める大衆向けのセンセーショナルな記事を量産できる記者たちが、メディアでは偉くなっていったように見えるのである。

メディアも市場にのっているのだから、仕方なしと諦め半分で眺めてはいる。ただ、人はこれを「市場の失敗」とは呼ばないのであるが、メディアが人々の認知バイアスを増幅させている姿は、おそらく本来あるべきメディアの役割を市場が歪めているためであろう。こうした話は、今回のコロナ禍での報道をみた人たちの多くがわかってくれるのではないだろうか。

しばしば、次のような話をする。

日本ではもちろん、世界中で大ベストセラーとなっている『ファクトフルネス』の著者ハンス・ロスリングは公衆衛生を専門とする医師。

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツに「世界はよくなり続けている。たとえ、いつもはそんなふうに思えないとしても。……大局的な視点から世界の姿をわれわれに見せてくれる」と評された『21世紀の啓蒙』の著者スティーブン・ピンカーは言語能力の獲得過程を研究してきた言語学者・心理学者。

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