テスラが危なっかしいのに抜群の期待集める訳 EVベンチャーの「死の谷」乗り越え新境地へ挑む

東洋経済オンライン / 2020年10月5日 7時20分

開発の思想も既存のメーカーとは異なっている。自動車業界では常識外れとされた、ノートパソコンで使われる汎用タイプの電池を独自の管理技術で使いこなし、自動運転機能の頭脳となるECU(電子制御ユニット)まで自前で開発している。販売も、ディーラーに頼らないインターネットや直営店による直販が基本だ。

■コロナ禍でも初の通期黒字化が視野

こうした先進性に加えて、今年に入って株価が急伸した理由は、安定的な黒字化が見えてきたことだ。

大衆市場に照準を定めた中級セダン「モデル3」の量産が軌道に乗り、2020年1~6月期の当期純損益は黒字を達成。コロナ禍でほかの自動車メーカーが売上高を3~4割落とす中、中国での販売が好調なことから、同年1~3月期の売り上げは39%増、4~6月期は5%減にとどめた。なお四半期ベースでは2019年7~9月期から4期連続の黒字で、今期は初の通年での黒字化が視野に入る。

テスラの株価には、バブル的な要素があるのも間違いない。世界的なカネ余り、米国におけるロビンフッダーと呼ばれるギャンブル感覚の個人投資家の存在、テスラ株のS&P500銘柄への採用をにらんだ先回り買いなどが株価を押し上げているとみられる。

成長期待や高い株価を背景にした資金調達力はテスラの生命線だ。創業以来赤字が続く中でも、多い年には40億ドル(約4200億円)規模の設備投資を行っており、その資金の大半は株式で調達してきた。公募増資、トヨタ、パナソニック、独ダイムラーなど大企業による増資、さらには大富豪であるイーロン・マスクCEO本人の資本注入もあった。転換社債も含めた株式による累計調達額は約180億ドル(約1.9兆円)に上る。さらに、9月1日には最大50億ドルの増資計画も発表した。

EVについては、「構造が単純なため、新規参入が容易」「自動車がパソコン化する」といわれてきた。これは一面では正しい。テスラ以外のEVベンチャーも数多くあった。しかし、参入できることと事業を継続できることは別問題だ。

エンジンがモーターに置き換わることでパワートレイン(駆動部分)はシンプルになる。一方、現在は自動運転機能などで開発費がかさむ。量産のために金型や原材料を手当てして工場や熟練労働者も用意すれば、投資は100億円単位で膨らむ。

市場投入までこぎ着けても、パソコンよりはるかに値が張り、命を預ける製品である。ポッと出のベンチャーが造ったEVが売れるとは限らない。デザインや性能のカタログ値で運よく人気を集めても、次は量産の関門が待つ。しかも実際に販売するまで収入はない。

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