「学術会議問題」致命的に見落とされている視点 政治に調達されるネット空間、議論できない国
東洋経済オンライン / 2020年10月15日 19時0分
日本学術会議に推薦された6名の学者の任命を菅義偉首相が拒否した問題が、はっきり言って混迷を極めている。このままでは、本件の問題の適切な把握と解決および検証はおよそ不可能になってしまう。
拙著『リベラルの敵はリベラルにあり』でも詳しく論じたが、基本的な構造として、この手の問題は、与党vs.野党、政権or反政権という二項対立に押し込めてどんどん油を注ぎ、それぞれの陣営にとってのごく一部の「支援者=上顧客」たちからの言論の「集団的自衛権」の行使をあおることによって、政治的な存在基盤を「調達」しようとする。
しかし、そこで燃え盛る炎は、対立当事者たちが先鋭的な二項対立をあおればあおるほど日本社会の大部分には「対岸の火事」か、下手をすると当事者たちが自分たちで火をつけている「対岸の焚火」になってしまう。
■学術会議問題も、また「政権vs.反政権」
今回も、野党第一党の議員らが「学問の自由への侵害」とわれ先に発信し、この「支援者」または「御用インフルエンサー」たちがこぞってこれに追随した。本来、社会問題を「争点整理」するはずのマスコミもまったく機能せず、まるで政権vs.反政権の「機関誌」と課して、「どちらが正しいか」の結論重視で、むしろ二項対立を固定し再生産している。
今回の問題は、政治的にも法律的にももちろん深刻な問題をはらんでおり、これを「政権vs.反政権」の構図に矮小化してしまっては、同様の問題を解決し、適切な責任主体に責任をとらせることもままならないばかりか、市民の政治への無関心やニヒリズムをさらに促進させてしまう。
そもそも本件は純粋な法律論として学問の自由の侵害なのだろうか? それ以前に、そもそも語られている諸所の問題点は、それぞれフェーズが違うのではないだろうか?
少し整理してみたい。
今回の問題は、いくつかの異なった要素が多層的に絡まり合っている。
法適用の関係等々の違いはあるのだが、黒川東京高検検事長の定年延長および検察庁法改正問題のときに筆者が考えた分類が今回も活用できそうである。
それは、(1)政治的意図の問題(2)法律論的問題(3)制度論的問題、これに加えて、今回は(4)日本学術会議という組織の意義についてという本件特有の問題が存在する。
以下、当該分類にわけて分析しよう。
(1)政治的意図の問題
本件で、菅首相は、105名のうち、特定の6名だけを任命拒否しており、その理由として、政権批判的な言説をしている学者であるなどと言った“憶測”が飛び交っている。
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