トヨタの成果主義拡大「6.5万人評価」の試練 新賃金制度では定昇がゼロになるケースも

東洋経済オンライン / 2020年10月25日 7時20分

主任職以外では区分けがなくDが昇給ゼロになる。こちらはCとDで全体の60%としている点が主任職との違いだ。60%すべてをC評価にすれば、昇給ゼロのDは出てこない。これは入社してから主任職になるまでを育成期間と位置づけ、社員のモチベーション維持を図る意味合いもあるようだ。

新制度でも人件費の中で昇給の総原資は同じだが、Dへの配分が減る分をA(期待を大きく上回る)とB(期待を一部上回る)へ重点的に配分する。そして、優秀者は従来よりも早く昇格できるようにする。

一律の定昇部分をなくし、評価に差をつけるうえで、カギとなるのはその評価基準だ。

トヨタは新制度の導入に先立ち2020年から「人間力」を評価基準に加えた。人間力は「周囲へ好影響を与え、頼られ・信頼される力」としている。具体的には、「自分以外のだれかのために頑張る」「自分はできていないと理解し、学ぼう、成長しようと努力し続ける」「相手を思いやり、当たり前のことを当たり前にできる」というもの。社員は各項目が実践できているかどうかを上長から評価され、最終的に4段階(◎、○、△、×)のいずれかに判定される。

これに加えて、評価基準には業務遂行力や企画立案力などに基づいて判定される「実行力」もある。この実行力と人間力を総合的に勘案して、最終的な評価(A~D)を決める。人間力と実行力の判定は直属の基幹職(課長級)が行い、社員を最終的にA~Dに割り振る「考課」の作業は幹部職(次長級以上)が行う。

■評価を開示してフィードバック

従来、組合員の定期昇給における考課の結果は開示されていなかったが、労使協議の結果、新制度が導入されて初めての定期昇給が行われる2021年春からD、D1、D2は開示される。以前に比べて昇給額が著しく下がったり、場合によってはゼロとなるため、会社としても開示せざるをえなくなったともいえる。

組合は、A、B、Cの評価についても開示を求めており、早ければ、2022年春から開示される。また、考課結果を開示する際はなぜその評価になったか、どのようにしたら評価を上げることができるか、組合員に丁寧にフィードバックすることも求めている。

人間力の導入は2019年秋の労使交渉で経営側が提案したのがきっかけだ。自動運転や電動化などCASEと呼ばれる次世代技術の競争が激化する中、トヨタは2018年1月に「モビリティ・カンパニーへの変革」を宣言し、グループ内外の連携強化を加速してきた。

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