逃げ恥脚本家語る「エンタメ共感競争」への異論 野木亜紀子氏「映画は客観、複数の視点がある」
東洋経済オンライン / 2020年10月30日 13時30分
――事件を社会の一部として取り上げるなかでも、野木さんの作品では社会的弱者の声や表に出にくいようなマイノリティの鬱屈した気持ちなど、見ようとしなければ見えないところをすくい上げています。
声が大きい人の言葉なんて放っておいていいんです。どうせ大きいんだから作品で伝えるまでもない。届かない声をすくい上げることに意味があります。私がもともとド庶民だからだと思うんですけど、どうしてもそちら側に立ってしまう。それに、視聴者や観客のほとんどは庶民ですよね。
■創作物に必要なのは共感だけではない
――伝えるべき強い思いがある一方、エンターテインメントである以上、興行収入や視聴率といった評価がついてまわります。作品に込めるメッセージや作家性と商業作品としてのバランスはどう考えていますか。
そこは意識しないといけないところです。“わかりやすさ”や“楽しさ”みたいなもので包みつつ、なにを伝えられるかということ。そのバランスはすごく考えています。私はどちらかというとバランサータイプ。感覚の問題ではありますが、どうしたらバランスがとれたエンターテインメントになるかつねに意識しています。ドラマでもプライムタイム枠と深夜枠では違いますし、映画でできることもまた異なります。わかりやすさの塩梅は媒体によるところもあります。
ドラマをやっていると、二言目には「視聴者の共感を得られるか」という話になります。確かにセオリーとしてはそうなんだけど、それ一辺倒もどうなのかなとは思います。いまの視聴者はSNSと地続きのようなところがあって、自分の考えとイコールではないものを理解できないと突き放す人も多い。これは自分だと思いながら、だれか1人の登場人物に肩入れしながら観るというのはたしかに楽しめるし、観やすいんだろうと思います。
一方、映画は主観ではなく客観で、複数人それぞれの視点があって成立します。たとえば、いろいろな登場人物がいて、その人たちは自分とは違う人間であるし、感じ方も違うけど、各自がそれぞれの考え方で動いている。そこは“共感”というよりも“理解”です。テレビドラマでもそれをやればいいんだけど、受け取る側のキャパシティーが狭まっている気がします。不快だったり、非常識に見える人物が毛嫌いされることが多い。
創作物とは共感だけではない。自分と同じ考えだけではなくて、自分とこれだけ遠い人がこういうことを考えているというある種の理解と、遠い人の人生を観ることによって想像力が生まれるもの。みんながそういう想像力を持てればいいなという気がします。
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