苦境のアパレル、コロナで直面した「人事改革」 リストラ頼みでは回復への道のりは険しい

東洋経済オンライン / 2020年12月1日 6時50分

新型コロナウイルスの感染拡大で、アパレル各社は苦しい状況に追い込まれている(撮影:今井康一)※写真はイメージです

「希望退職の募集結果に関するお知らせ」「人員削減プログラムの実施」――。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、赤字決算が相次ぐアパレル業界。青山商事、オンワードホールディングス、ワールドなど、今年は大手アパレルの間でもリストラに関するリリースが後を絶たない。

帝国データバンクの調査では、新型コロナの影響を受けた関連倒産744件のうちアパレル小売店は48件。業種別では飲食店とホテル・旅館、建設・工事業に次いで多い(いずれも11月27日までに判明分)。

外出自粛の長期化でファッションの需要自体が低迷しているうえ、在宅勤務の浸透やEC(ネット通販)の利用拡大など、消費者のライフスタイルは急激に変化した。大半のアパレル企業は店頭への来客が大きく回復する見通しを立てられず、企業存続のために大規模な構造改革が避けて通れない。

■リストラは収益改善の近道だが…

紳士服最大手の青山商事はスーツ需要の急減を受け、不採算店の大量撤退と正社員の約1割に相当する400人の希望退職者の募集を発表。「ナノ・ユニバース」などを展開するアパレル大手のTSIホールディングスも、本部のスリム化のため300人規模の希望退職者を募集中だ。

同社の上田谷真一社長は10月の決算会見で、「クリエイティブ系や顧客サービスにかかわらない業務は、極力自動化するか外注にしたい。販売員も、リアル店舗とデジタル空間のハイブリッドで接客や発信ができる人材に切り替えていく」と強調した。

希望退職などによる人件費の大幅削減は一時的な収益改善につながるものの、会社の次世代を担う有能な人材の流出は必至だ。アパレル業界では長年にわたる構造不況下で、過去にも社員のリストラで危機を乗り越えてきた企業が珍しくない。

「リストラのたびに実力のある中堅らがごっそりと会社を離れ、その後のブランド力や販売力の低下につながった。他社で通用する実績や手腕のある社員ほど辞めていく」(複数のアパレル幹部)

2019年の消費税増税に暖冬、そしてコロナ禍と三重苦に見舞われた多くのアパレル企業は採用を一気に抑制し、再就職市場は冷え込んでいる。アパレル・ファッション業界専門の転職支援サービス「クリーデンス」の調査によると、新型コロナの感染が拡大した2020年3月以降の求人数は、EC関連の業務などを除いてほぼすべての職種で大きく減少した。

それでも、40歳以上を対象に希望退職者の募集を今年行ったオンワードHD(募集期間は1月)やワールド(同9月)では、募集人数を大幅に上回る社員の応募が集まった。希望退職の場合は通常の退職金とは別に特別金が支払われるとはいえ、これほど厳しい市場環境のさなかだ。別の大手アパレルの社員は「アパレル業界や会社の先行きを不安視している社員たちの心情の表れでもある。業界外への転職を考える人も多いだろう」と推察する。

■下着の名門も人件費削減が課題に

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