日本のコロナ重症者対応が抱える決定的な弱点 医療崩壊の責任は民間病院でなく厚労省にある
東洋経済オンライン / 2020年12月27日 21時30分
小池百合子東京都知事は12月21日の会見で、年末年始について「命を優先していただきたい。家族でステイホーム」と述べ、買い物や通院を除いて、できるだけ外出を自粛するよう呼び掛けた。(写真は東京都内で12月19日撮影、ロイター/Issei Kato)
新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染が拡大し、日本の医療は崩壊の瀬戸際にある。12月21日、日本医師会や日本看護協会など9つの団体は、「このままでは全国で必要な全ての医療提供が立ち行かなくなる」と「医療緊急事態宣言」を発表した。
12月25日には、田村憲久・厚生労働相が、病床が逼迫している地域で、重症向け病床がある医療機関に対して、1床あたり1500万円を補助することを表明した。詳細は公表されていないが、実際の患者の受け入れとは関係なく、病床を整備すれば支払われるのだろう。
もちろん対応は不可欠だが、筆者は、このようなやり方に違和感を抱いている。本稿では、日本の重症コロナ対策を海外と比較して論じたい。
まずは下記の表をご覧頂きたい。東アジアおよび欧米の人口当たりのコロナ感染者数、死者数、医師数、病床数を示している。欧米と比較して、日本は感染者も重症患者も少ないことがわかる。12月25日現在、人口1000人あたりの感染者数は1.7人だ。アメリカの33分の1、フランスの24分の1、イギリスの19分の1、ドイツの11分の1だ。
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日本の医師数はアメリカの96%、フランスの76%、イギリスの89%、ドイツの59%だが、急性期病床数はアメリカの3.2倍、フランスの2.5倍、ドイツの1.3倍もある(イギリスは不明)。慢性期病床も加えた総病床数はさらに多い。コロナ重症者に対して、欧米諸国が、それなりに対応しているのに、数の面で大きく見劣りするわけではない日本の医療がどうして崩壊してしまうのだろう。個別個別の病院や医療関係者に責任があるわけではない。全体を統括する厚生労働省の方針、運営に問題があると言わざるをえない。
■重症者を集中的に診る病院が整備されていない
ずばり言えば、日本ではコロナ重症者を集中的に診る病院が整備されていないことだ。12月26日現在、都内の病院に入院している重症患者は81人だ。東京都は重症者用ベッドとして220床をすでに確保しており、250床まで増やすように医療機関に要請中だ。
では、どのような病院が重症患者を受け入れているのだろうか。実は、このことについて厚生労働相と東京都は情報を開示していない。知人の東京都議に調査を依頼したが、「東京都からは教えることはできない」と回答があったという。
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