コロナ後「移動の自由」取り戻す為に必要なこと 必要なのは的確なリスク評価と迅速果断な政策

東洋経済オンライン / 2021年1月18日 10時30分

世界中で多くの人々が国境の中に閉じ込められている(写真:Lewis Tse Pui Lung/PIXTA)

コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。

■コロナに奪われた「移動の自由」

新型コロナウイルスは急速に、そして静かに世界に広がった。厄介なのは、感染者がまったく意識しないまま感染が拡大してしまうことである。人から人への感染のうち約45%は、症状が出る前の感染者からほかの人への感染である。感染性は発症2日前から強くなる。つまり、本人が咳や発熱などの症状に気づいたときには、ほかの人にすでに感染させている可能性がある。

この見えない敵に対して、世界は人の「移動の自由」を制限することで対峙してきた。指導者たちは、国内ではロックダウンや緊急事態宣言、国境では入国拒否や水際対策という、人の移動を強力に制限する措置を実施した。

ただし、人の移動を制限する意思と権限と執行について、各国政府はまったく異なるアプローチで臨んできた。

中国は当初、感染の実態をすすんで公開せず、その間に多くの人々が国境を越えて往来した。しかし武漢を封鎖してからは一転、きわめて厳格な措置をとり、「移動の自由」などお構いなしに封じ込めに邁進し、テクノロジーを総動員し、その強烈な執行力を世界中に見せつけた。皮肉にも、中国は世界でいち早くコロナから「移動の自由」を取り戻した国になった。

人権を尊重し、「移動の自由」を保障することを是とする欧州諸国も、感染症危機に際し、ロックダウンを敢行し国境管理を厳格化した。

日本は昨年4月に緊急事態宣言を発出し、強制力の伴わない行動自粛要請(ソフトロックダウン)で感染拡大を抑制した。日本政府の対応を検証した「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(コロナ民間臨調)の報告書では、当事者が緊急事態宣言や入国拒否を「伝家の宝刀」にたとえている。「移動の自由」の制限は、重い決断であった。

経済再生のためGoToキャンペーン事業を官房長官のときから推進してきた菅首相も、ついに1月7日、2度目の緊急事態宣言の発出を余儀なくされた。

新型コロナのもう1つの特徴は、感染してから発症するまでの潜伏期間に1~14日間と幅があることである。潜伏期間中の感染者はウイルス排出量が低くPCR検査でも感染を検出しにくい。したがって、国境を越えた人の移動については、陰性証明に加え、14日間の隔離が求められるようになった。しかしこれでは短期の出張や旅行はできない。人々は国境の中に閉じ込められた。

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