菅政権が「コロナ第3波」の対応に遅れたワケ 8割おじさん・西浦教授が政策決定過程に苦言

東洋経済オンライン / 2021年2月6日 10時0分

菅政権が依拠した内閣府の分析には問題があり、厚生労働省の病床確保計画のスキームも反故にされた(写真:ブルームバーグ)

10都府県で3月7日まで1カ月間延長された政府の緊急事態宣言。なぜ、菅義偉政権は「Go To キャンペーンと感染拡大には関連がない」と主張し、新型コロナウイルス第3波を長引かせてしまったのか。

厚生労働省への助言を続け、昨春の緊急事態宣言時には接触8割削減を提唱して「8割おじさん」と呼ばれた西浦博・京都大学教授に、理論疫学の最新知見や医療提供体制の課題を含め、話を聞いた(インタビューは1月27日に実施)。

――昨春の第1波に比べると、世界のコロナ対策は、より部分的なロックダウンを中心に据えるようになっています。疫学研究者の世界では、どんな新型コロナウイルスの知見が得られたのでしょうか。

1人の感染者が何人の2次感染者を生み出すのかという「実効再生産数」(「東洋経済が新型コロナ『実効再生産数』を公開」を参照)は感染の広がり度合いを示すものだが、何が新型コロナの実効再生産数に影響を与える要因になるかについて、4つのことが世界的に実証されてきた。それは気温、人口密度、人の移動率、そしてコンプライアンスだ。

気温が低いほど新型コロナの伝播は起きやすいことは実証研究でもはっきりしてきた。また、都市部ほどレストランなど密な屋内空間に入りやすいという意味で、人口密度は実効再生産数と正の相関関係を持っている。人の移動率については、グーグルが公表する「コミュニティ モビリティ レポート」の移動率データ(娯楽含む)を基に実効再生産数を予測すると、予測可能性が高まることがわかった。最後のコンプライアンスとは、接触につながる行動の自粛を指し、マスク着用やソーシャルディスタンスなどの度合いを含むものだ。

■第3波の要因は政府対応の遅れと冬の気温低下

世界の国・地域によって流行の濃淡が出ている理由は、これら4つの要因で相当部分を説明できるようになった。最近の国内外の対策が飲食店などに的を絞ったものとなっている背景には、このような疫学上の知見がある。日本で第3波が拡大してしまったのは、政治による対策の遅れに加えて気温が相当程度に効いたためと考えている。

――内閣府は昨年11月の「経済財政報告」の中で、「統計分析の結果、人の外出率の低下は新規感染者数に有意に影響を及ぼさなかった」としました。これが「Go To トラベルは感染拡大に影響していない」と菅政権が主張した1つの根拠となっているようです。

私は、それはまずいと思ってきた。内閣府の分析では昨年2月15日~5月31日(第1期)と6月1日~9月1日(第2期)の頃に影響がなかったと言っている。それは今後十分に検証されていくことになるが、はたして統計学および理論疫学の十分なバックアップの下で検討された結果だろうか。

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