アビガンが今になっても承認下りない根本理由 どんな臨床試験が行われたか知っていますか

東洋経済オンライン / 2021年2月12日 16時0分

安倍前首相が一押しし、コロナ治療薬候補として期待が高まった「アビガン」は今?(写真:Akio Kon/Bloomberg)

国内では新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下、新型コロナ)の第3波流行が到来し、政府は1月7日に首都圏の1都3県に対して新型インフルエンザ等特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令。その後、宣言対象地域は11都府県にまで拡大し、期限を迎えた2月7日で解除されたのは栃木県のみで、残る10都府県では3月7日まで宣言が延長された。

感染者増加を阻止する手段であるワクチンは、すでに欧米で接種が始まり、日本でも今月中に医療従事者などの優先接種が開始される見込み。しかし、すでに感染して中等症、重症となった患者での治療選択肢はまだ少ない。

現時点で使用可能な薬は、従来感染症に使われ、新型コロナの重症肺炎患者で死亡率を低下させることが報告されたステロイド薬のデキサメタゾン、アメリカでの臨床試験を基に5月に特例承認された、ウイルス増殖を抑える抗ウイルス薬のレムデシビルの2種類のみだ。

これ以外に数多くの候補薬の臨床試験が行われているが、有効性が明確に証明されているものは少ない。その中で一時注目を集めたのが富士フイルムの子会社・富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザ薬のファビピラビル、製品名「アビガン」である。前後編にわたって「コロナ治療薬候補」としてのアビガンについて追っていきたい。

■安倍前首相が承認について強い意志を示したが…

パンデミック初期の昨年2月、中国科学院武漢ウイルス研究所はアビガンが試験管内で新型コロナウイルスに対して効果を示したと報告。同5月には安倍晋三前首相が「今月中の承認を目指したい」とまで言及した。当時、愛知県の藤田医科大学で医師主導の新型コロナ軽症患者に対するアビガンの臨床試験が進行中で、安倍前首相はこれで良好な結果が出れば迅速承認に結び付ける願望があったとみられる。しかし、同7月にようやく発表された試験結果では有効性は示せなかった。

一方、富士フイルム富山化学も厚生労働省(以下、厚労省)へ新型コロナにアビガンを適応拡大するための臨床試験を実施していた。試験開始時期が国内の第1波流行収束時に重なったことで臨床試験参加患者の確保が進まなかったが、その後の第2波流行で参加患者確保にメドがつき、最終的に良好な成績が得られたとして昨年10月に厚労省に対して製造承認を申請した。

しかし、昨年12月21日、その承認可否を審議した厚労省薬事・食品衛生審議会(薬食審)医薬品第二部会は「現時点で得られたデータから有効性を明確に判断することは困難」として、この時点での承認を見送り、継続審議とした。承認しないのではなく、アメリカやクウェートで行われている臨床試験の結果を待って判断するとの方針を示したのだ。

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