コロナ禍で問われる「宝塚歌劇経営」の底力 3密対策はファンとの「お約束」を壊す可能性も

東洋経済オンライン / 2021年2月20日 16時0分

コロナによって全公演を休止していた宝塚歌劇団。その後、コロナ対策に取り組み公演を再開させた宝塚歌劇団が直面するジレンマとは? (写真:Graphs/PIXTA)

コロナによって昨年3月23日より全公演を休止していた宝塚歌劇団は、その後コロナ対策に取り組み公演を再開させた。しかし、コロナ対策をした公演は、ファン離れを誘発しかねないと元宝塚総支配人で、現在阪南大学で教鞭をとる森下信雄氏は指摘する。
このたび『宝塚歌劇団の経営学』を上梓した森下氏が、宝塚歌劇団が直面するジレンマについて解説する。

■公演での3密対策

コロナ禍に見舞われた2020年度上半期、ほぼすべての宝塚歌劇公演が休演することとなった。その間には、新トップスターのお披露目公演、2020年3月に入団した第106期生の初舞台公演、ブロードウェイミュージカルの宝塚初演といった話題作が目白押しであったのだ。徐々に公演を再開しているものの、3密対策の実施は宝塚歌劇公演の風景を大きく変えてしまった。

宝塚大劇場および東京宝塚劇場公演では、客席稼働数をフルキャパシティーの約半数で再開。ほかのエンターテインメント同様に、様子を見ながらキャパシティーを広げる方向にあるものの、フルキャパシティー解禁の道のりは遠いと言わざるをえない。

宝塚歌劇ファンは熱狂的と称され、「通常公演を熱望しているのでは?」と聞かれることが多いが、やはり相手が目に見えないウイルスである以上、熱心なファンであっても、感染対策が不十分であれば観劇を回避する方々が一定割合出ているのが実際だ。

また、作品制作上の変更も余儀なくされている。通常の公演では生演奏のオーケストラは休止したまま復活していない。宝塚歌劇最大の売りの1つである、豪華絢爛な衣装を身にまとったスターたちが舞台を埋め尽くすショーの演出も変更せざるをえない状況になっている。

演出への悪影響は、顧客に見えている舞台上だけではなく舞台裏にも及ぶ。宝塚歌劇の名物とも言える衣装の「早替わり」や迅速な舞台装置の転換は、裏方の人数に負うところが大きい。つまりは「密」が発生しているのである。

宝塚大劇場公演は通常、芝居とショーの2本立てである。実際に再開後の舞台を見て、芝居では3密回避策の影響はさほど感じられないが、やはり「密」な状態が当たり前であったショーの演出は、いくら工夫を凝らしてもファンの目には「何かが違う」という違和感が残ってしまっている。

私は、この「何かが違う」というファン心理が何より怖いと感じている。

なぜなら、ファンが価値を置いているのは、芝居、ショーの質のよさもさることながら、長年応援している生徒の舞台での振る舞い、演技、そして「これぞ宝塚歌劇」という差別化要因=「世界観」であるからだ。

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