「給料ゼロ」コロナ診療担う大学病院の深い闇 タダ働きを強いられる医師たちの切実な声

東洋経済オンライン / 2021年2月22日 8時0分

労基署は医師に適切に賃金を支払うよう、日本医科大学付属病院に是正勧告を行った(記者撮影)

2021年1月、日本医科大学付属病院は、同大学に在籍する大学院生の医師に診療行為をさせながら賃金を適切に支払っていなかったとして、東京労働局中央労働基準監督署から是正勧告を受けた。賃金がほとんど支払われずに働く、いわゆる「無給医」について、労基署が是正勧告を行うのは初めてとされる。

中央労基署は是正勧告と併せ、過去2年分の院生の診療実態を精査し、未払い分の賃金を支払うよう指導した。無給医による診療が広く行われていると判断したとみられる。

「診療は労働にあたるという、当たり前の判断がなされてよかったと思います。大学病院では無給診療は当然という考えが根強くありますが、やりがい搾取を前提とした医療など間違っていると思います」。労基署に申告した院生はそうコメントし、適切な対応を求めた。

■文部科学省の調査は氷山の一角

無給医とは大学病院の医師のうち、実習や研究などの名目で診療に当たっているため、受け取るべき給与の全額または大半が支払われていない院生のことだ。院生といっても医師免許取得後6~8年目、30才代前半で、大学病院の診療を最前線で支えている中堅・若手医師がほとんどだ。

文部科学省の調査によると、無給医は全国の大学病院に2819人いた(2018年9月時点)。ただ、これは大学病院側からの回答に基づくもので、氷山のほんの一角とみられている。

実態としては労働として診療し、病院は保険者に診療報酬を請求している。にもかかわらず、雇用契約を結んでおらず、労災保険にも未加入で、健康保険や年金など社会保険料はすべて自己負担となるなど、その労働環境には問題が山積している。

労基署の是正勧告に対して、日本医科大は「2020年4月より嘱託医として(従来からの)リサーチアシスタントと同等の賃金が、リサーチ以外の労務に支払われるようになった」として、院生の待遇改善が進んだとコメントした。

日本医科大で働く院生のA医師は、「従来は毎日朝から晩まで診察しても、アシスタント代として月8万円が支払われるだけだったが、昨年からは嘱託医として半日診察すると5000円が支払われるようになった。合わせて月収20万円ほどとなり、また雇用契約を結ぶようになったので半歩前進とはいえる」と話す。

ただし、依然として社会保険料は自己負担だ。「医師会運営の国民健康保険に加入しているが月額6万円前後かかり、月収20万の立場にはかなりの重荷」(同)となっている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング