ガーナで名誉酋長になった日本人が築いた信頼 チョコの原料カカオ産地を15年にわたって支援

東洋経済オンライン / 2021年3月5日 13時0分

チョコレートの原料、カカオの世界第2の産地、ガーナで支援活動を続け、名誉酋長になった明治の社員がいる(写真:明治)

ガーナと聞いて、チョコレートをイメージする日本人は少なくないだろう。実際のところ、日本はチョコレートの原料となるカカオ豆のほとんどを、ガーナ共和国から輸入している。その量はカカオ豆の全輸入量の7割以上にのぼり、もはや日本のチョコレート製造は、ガーナのカカオ生産者なしには成り立たない。

そんな重要なカカオ生産国、西アフリカのガーナでカカオ産地を支援し、名誉酋長に任命された日本人がいる。明治の生産本部技術部専任部長 土居恵規さんだ。酋長は、現地で「チーフ」と呼ばれるリーダーで、住民からリスペクトされ、大きな影響力を持つ。外国人の任命は異例なうえに、10年以上コンスタントに現地を訪れ、慕われている日本人酋長は他にいない。

土居さんが酋長に選ばれたきっかけは、16年前にさかのぼる。

■ガーナでカカオ農家の現状を知った

土居さんがガーナを初めて訪れたのは、2005年。明治製菓(当時)の社員として、チョコレートに使うカカオ豆の品質調査をするのが目的だった。そこで土居さんは、現実を目の当たりにした。「カカオ生産者のほとんどが零細農家で、村には水道、電気、道路、学校、病院などインフラが整っていないところが多く、人々の生活は楽ではありません。それならカカオ豆を買う地域に我々が支援し、長く関係を築いていこうと思いました」(土居さん)。

明治がカカオ豆を購入するガーナ西部のアセラワディ村では、住民のほとんどが、カカオで生計を立てている。困りごとをヒアリングすると「井戸がほしい」という声が多かった。日本の常識では考えにくいかもしれないが、村には水道がない。水は遠くにある小川へ汲みに行かねば手に入らず、それは主に女性や子どもの仕事だった。

土居さんは、情報を自社に持ち帰って井戸の寄贈を決定。2009年に、井戸は1年ががりで完成した。「ある日、村の人から今日はちょっとしたセレモニーがあるらしい、と聞いたので出かけていったら、まさか自分が主役だったとは……」と、土居さんは振り返る。実は、セレモニーとは、土居さんの「名誉酋長任命式」だったのだ。あわせて、井戸のお披露目式も盛大に開かれた。子どもたちをはじめ、村人全員が集まり井戸を囲んだ。「水が汲み出された瞬間はとくに感動的で、大きな歓声があがりました」。

任命式で、土居さんは村に井戸をもたらしたことを感謝され、アセラワディ村のチーフから「開発担当酋長」に任命された。酋長の正装であるガーナの色鮮やかな伝統衣装、ケンテを授けられ、酋長であることを示す、金細工入りブレスレットや指輪を受け取った。また、生きた山羊を1頭、与えられたという。「ガーナで山羊は、セレモニーには欠かせない大切な動物なんです。私は村人に胴上げされ、村に貢献してくれてありがとう、今日からあなたは酋長だ、といわれました」。

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