1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ

どんぐり街道、旭紋…高速の愛称は定着するか いまいち「ピンとこない名前」が増える理由

東洋経済オンライン / 2021年4月1日 9時0分

名古屋市を走る名二環「上社JCT」(写真:T-Urasima / PIXTA)

先日、今年5月1日に「名二環」が全線開通するというニュースがあり、NEXCO中日本のホームページにも華々しく開通を周知するページが用意された。

東海地方にお住まいの方、あるいは全国の高速道路を走り尽くしている方であれば、馴染みのある名前かもしれないが、それ以外の人は「めいにかん」と聞いても、きっとすぐにはピンとこないだろう。

これが「徳島道」や「東九州道」などであれば、正確ではなくてもどのあたりの高速道路か名前から推察できるが、「名二環」はハードルが高そうだ。

筆者は愛知県に実家があるので、しばしば帰省する際に名二環のお世話になっているが、東京で暮らしているせいか、日常生活でこの言葉を聞くことはなく、いまだにどこか遠くの名前のように感じてしまう。

「舞若道(まいわかどう)」しかり、「日沿道(にちえんどう)」しかり、高速道路の名称、特に略称になると地元の人以外にはとっつきにくくなりがちだ。

■名二環は東名阪道の一部だった

名二環の正式名称は、「名古屋第二環状自動車道」。その名のとおり、名古屋市の外周をぐるりと環状に取り囲む高速道路で、南側は伊勢湾岸道のルートを使って、分岐点の名古屋南JCT(ジャンクション)から時計と反対まわりに上社(かみやしろ)、楠(くすのき)、清洲(きよす、ただし現在の自治体名は清須)などを経て、名古屋西JCTから今回開通する飛島JCTまでを結んでいる。

名二環で最初に開通したのは、「名古屋西JCT~清洲東IC間」で、そのときは名古屋西JCTで接続する東名阪(ひがしめいはん)道の延伸という位置づけで、名前も「東名阪道」だった。今も筆者が名二環の名称にピンとこないのは、東名阪道として体が覚えこんでしまったせいでもある。

考えてみれば、関東の「圏央道」や「外環道」も、正式名称は「首都圏中央連絡自動車道」「東京外環自動車道」と長く、それだけではわかりにくい略称だ。しかし、東京近辺の情報はマスコミで全国に拡散されることもあり、首都圏以外でも名前はある程度定着している。それに比べると、名二環の知名度やなじみ具合は全国には及ばない。

そもそも高速道路の呼び方は、正式な道路名称がそのまま定着しているとは言いがたい。その代表的なものが、日本を代表する高速道路といってよい「東名高速道路」と「名神高速道路」である。

クイズなどにも時折出題されるのでご存じの方も多いと思うが、東名高速道路の正式路線名は、「第一東海自動車道」、名神高速道路の正式名は「中央自動車道西宮線」(東京都杉並区~西宮市)の一部で、通称と正式名が大きくかけ離れている。今、第一東海自動車道といわれても東名高速道路を思い浮かべる人は皆無に近いであろう。

このように高速道路の通称名は短くわかりやすいものが付けられているが、省略した形になると、初めて聞いた場合、どこの高速道路かわかりにくいものが出てきた。

たとえば、秋田市と新潟市を日本海に沿ってつなぐ、「日本海東北自動車道」。この略称には、「日東道(にっとうどう)」が使われているが、この名称だと走っている地域がイメージしづらいであろう。しかも、ややこしいことに法律上の路線名は、新潟市から秋田市を経て青森市までが「日本海沿岸()東北自動車道」となっており、こちらには「日沿道」という略称がある。

JRが東北線の関東エリアの部分に「宇都宮線」という愛称をつけたり、東海道線の関西区間を「琵琶湖線」「京都線」「神戸線」と名付けて案内をするなどわかりやすくしているのと比べると、略称のほうも少々わかりにくい感じがする。

■舞若、旭紋…一般名詞のような略称

こうした中、現地へ出かけてみて、ほかの地域の人になじみの薄い略称が多く使われている路線が2つあった。「舞鶴若狭自動車道」と「旭川紋別自動車道」である。

前者は、吉川JCTで中国道から分岐し、福知山、舞鶴などを通って、福井県の敦賀JCTで北陸道と合流する路線、後者は北海道比布町の比布JCTで道央道から別れ、オホーツク海沿岸の紋別までの高速道路だが、現在は遠軽までの開通となっている。そして、前者は「舞若道(まいわかどう)」、後者は「旭紋道(きょくもんどう)」と略称されている。

舞若道はかなり定着していると思われ、地元紙を見ても「舞若道」がそのまま見出しに使われている記事を見つけることができた。それでも最初に目にしたときは、幸若舞(こうわかまい=能や歌舞伎の原型といわれる語りを伴う曲舞)を極める「道」なのかと大いなる勘違いをするほど、なじみのない名前だ。

旭紋道も、この名を見てすぐに旭川と紋別を連想できるのは、北海道の地理に詳しい人に違いない。

以前、筆者が京都に住んでいたとき、奈良に出向く際に使ったのが「京奈和(けいなわ)自動車道」である。文字どおり、京都と奈良、和歌山を結ぶ高速道路だ。この京奈和道を走っていると、一定間隔で写真のような「どんぐり街道」という標識が設置されていることに気づく。

開通時に、どんぐりの実をつけるブナ科の樹木を植栽したことから名付けられたもので、NEXCO西日本のホームページ上に掲載された「事業評価」には、「現在、どんぐり街道の名が定着しています」と記されているのだが、どうであろうか。

■世界に知られる「SHIMANAMI」

愛称が定着している高速道路で、「しまなみ海道」の右に出る路線はないだろう。広島県尾道市から、因島、大三島などの瀬戸内の島づたいに、愛媛県今治市までを結ぶ「西瀬戸自動車道」は、その風光明媚な景観もあって、しまなみ海道という名がすっかり定着した。

しまなみ海道には、新尾道大橋を除いたすべての橋に歩行者自転車専用道(原自歩道)が敷かれており、多島海の絶景を見下ろして走れることからサイクリスト(自転車愛好家)の間で人気が上昇。サイクリストの聖地となったことも、「しまなみ」の知名度を上げた大きな要因である。

サイクリストは、「しまなみを走ってみたい」とはいっても「西瀬戸道を走ってきた」とはいわないだろう。海外で愛読されている旅行ガイド『ロンリープラネット』や『ミシュランガイド』でも紹介され、「SHIMANAMI」は今や海外のサイクリストからも熱い視線が注がれている。

高速道路の愛称が自転車の力で拡散されたというのは、なかなか前例がないユニークな事例だ。なお、国土交通省のHPでは、この自転車道の名称を「しまなみ海道サイクリングロード」としており、「しまなみ」はもはや愛称ではなく正式名称となっている。

わが国では、国土の骨格となる高速道路はほぼ整備されてきたといえる。しかし、まだまだ高速道路網の整備・拡充の計画は目白押しだ。また、コロナ禍が収束し、再びインバウンドの誘致に力を入れるとなれば、現在の高速道路により魅力的な愛称がつけられることもあろう。たかが名前、されど名前。そんな視点からも高速道路に注目していきたい。

佐滝 剛弘:城西国際大学教授

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング