1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

英国知識人を見事だました「嘘の台湾誌」の内容 希代のペテン師執筆、見抜いたのはあの科学者

東洋経済オンライン / 2021年5月5日 16時30分

作者の妄想で書かれた『台湾誌』をめぐる興味深い話をお届けします(写真:bedo/iStock)

かつて一般に受け入れられたものの、現代では「奇書」になってしまった書物はたくさんあります。奇書研究家の三崎律日氏が挙げるとんでもない奇書の1つが、1704年にロンドンで出版された『台湾誌』です。作者は自称・台湾人のジョルジュ・サルマナザールで、彼が幼少期を過ごした台湾の地理、民族、歴史などを詳細に記した書物です。これは当時の様子を伝える文献として、重要な歴史資料といえます。ただし、この本がすべて作者の“妄想”で書かれた点だけ除けばですが……。

※本稿は三崎氏の近著『奇書の世界史』を一部抜粋・再構成したものです

■「日本人」として生きることを思いつく

ジョルジュ・サルマナザールは、1680年頃に南フランスで生まれました。本名はわかっていません。幼少期は、修道士が開く寺子屋のような場所でさまざまな学問に触れ、宗教学や論理学、ラテン語の才能を開花させます。

その後、サルマナザールもまた地域の家庭教師として生徒の指導を行うようになりました。ところが、訪問先の生徒の母親から誘惑されるといったことから、自分の職に嫌気がさし、身分を修道士と偽りながらヨーロッパ各地の放浪を始めるのです。

旅を続けるなかで、イエズス会派の宣教師たちとも交流を持ち、ある時、遠い異国の「日本」なる国の話を耳にします。ニセ修道士として、その日暮らしの生活に限界を感じていたのか、サルマナザールは突如、「日本人」として生きることを思いつくのです。

その後、食い扶持を稼ぐためにスコットランド軍の新兵募集に応募しました。日本人を自称する謎の異教徒に対して、兵士らは各々宗教的な議論を持ちかけます。もともと博覧強記で頭脳明晰の“日本人”は、簡単に相手を煙に巻きます。

人を喰ったような振る舞いのせいか、サルマナザールの噂は上官の興味を引き、当時の連隊長官に呼び出されることになりました。そこに同席していたのが、のちに「この世で最も聖職者にふさわしくない者」と評される、ウィリアム・イネス従軍牧師です。

同族同士に通じる嗅覚ゆえ、イネス牧師はひと目で彼のペテンとウソを突き通す才能を見抜きます。そして2人きりのときを見計らってある課題を出しました。

イネス牧師「あなたの日本語に関する知識は驚くべきものだ。ちょっとこのキケロ(ローマ共和制末期の政治家、文筆家、哲学者)の文章を日本語に訳してはもらえないか?」

サルマナザール「お安い御用だ!」

サルマナザールは“日本の文字”で書いたとする、まったくのでたらめな文章を即興で書き上げ、イネス牧師に差し出しました。

■イネス牧師が発した意外な言葉

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング