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トヨタが「答えを教えない」からこそ人が育つ訳 当たり前の前提さえ疑いすべてを自分で考える

東洋経済オンライン / 2021年5月5日 10時0分

すべてを疑い、遠慮なくやり合う姿勢が自活力に結実する(写真:Akio Kon/Bloomberg)

2020年度(2020年4月~2021年3月)の登録車販売台数順位(乗用車ブランド通称名別順位/日本自動車販売協会連合会)では、トップ10のうち7車種をトヨタ車が占めました。最近はこの傾向が長期間継続しています。

4月13日配信記事、4月20日配信記事に続いて、『トヨタの会議は30分』から一部を抜粋・再構成して、トヨタのそうした本質的な強さを生み出す社内の暗黙知、特に今回は、若手の段階でトヨタ社員が叩き込まれていく本質的な思考やコミュニケーションのあり方を、元トヨタのエンジニアで、現在はコンサルタントに転身した山本大平氏が紹介します。

■「なぜ?」を5回繰り返すのはなぜか?

トヨタといえば、本質的な課題意識を重視するために、「『なぜ?』を5回繰り返す会社」としても有名です。ただ、長らくトヨタの生産現場で働いていた経験からすると、実態は少し違います。

どういうことかというと、まずトヨタの現場では、「なぜ?」を聞かれるのは5回どころの話ではありません。確かに5回は「なぜ?」を繰り返せという社内慣習がありますが、それはあくまでケースバイケースで、必要ならばどこまでも「なぜ?」を繰り返すことを求められます。

入社して1年半ほどの頃には、上司に次のように詰問されたこともありました。「山本、『なぜ?』を5回繰り返すのはなぜか? お前の考えを言ってみろ」。

トヨタでは万事がこの調子で、あらゆる事柄について疑問を持ち、自ら考えるように促されます。標準化されている社内ルールですら、自分自身で考えて、その本質を理解しないといけない会社なのです。

5回という数なんてどうでもよくて、「なぜそういう理屈になっているのか、なぜ今そういう質問をしているのか、自分の頭で考えること」が求められます。そうした力、言ってみれば物事の本質を洞察する思考力を、日々のコミュニケーションによって鍛えるカルチャーのため、常日頃から「なぜ?」の嵐です。

しかも、答えは教えてくれません。自分なりの考えを言うと、「なるほど。それがお前の考えか」といった感じで、答えた内容が合っていたかどうかは、その後の上司の指示や態度で判断するしかないケースがほとんどでした。むしろ、答えは人それぞれだから、別に明確な答えは必要ない。それでも考えることに意味があるんだという訓練法、あるいはコミュニケーションのスタンスが共通化されていたと感じます。

こうした「なぜ?」の繰り返しによるトヨタの思考訓練は、さまざまな場面で繰り出されます。また「なぜ?」ではなく「定義は?」という形で疑問を投げかけられることもしばしばありました。特に上司が部下に指導をするときには、この形が頻繁に使われていました。一例ではありますが、忘れもしないトヨタ時代の入社2年目頃のエピソードを紹介します。

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