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餅もミカンも注意「カビは削れば食える」の危険 多くのカビ毒は症状がすぐに表れない

東洋経済オンライン / 2021年5月13日 22時0分

カビが生えた部分を削って食べるのは避けたほうがいい理由を解説します(写真:ecobkk/PIXTA)

食品を放置すると、知らないうちに生えてくるカビは、口に入れても問題ないのか。例えば餅については、「カビの部分を削って食べれば大丈夫」という意見が戦前から一般的だったが、「それでは安全といえない」とカビの専門家である浜田信夫氏は指摘します。食品のカビの危険性について、浜田氏が解説します。

※本稿は浜田氏の近著『カビの取扱説明書』を一部抜粋・再構成したものです。

前回:健康被害ないけど気になる「スマホのカビ」生態

■カビの毒性に関する意識はなかなか変化しない

人々のカビへの対応に変化を感じるようになったのは、ここ20年くらいのことだろうか。「このカビはなにか健康被害を及ぼすカビですか」とよく聞かれるようになった。人体に健康被害を及ぼす代表は食品と住宅だが、食品と住宅では、カビによる健康被害がまったく異なる。

食品のカビによる被害は、食べてしまった時のカビ毒だ。一方、住宅のカビによる被害は、胞子を大量に吸い込んだ場合のアレルギー性の疾患と、体内でも生育するカビが起こす真菌症である。住宅に生えたカビは、人が舐めたりしない限り体内に入るわけではないから、カビ毒の有無は関係ないのである。

20年ほど前までは、年輩の主婦の方々は大半「餅のカビは食べても大丈夫」と思っていた。カビが生えた餅は酸っぱくなって味は落ちるが、毒性という点では大したことはないと考えられており、カビの部分を刃物で削って食べれば大丈夫との意見が、戦前から一般的だった。今日では、ミカンも餅も、カビの周辺を取り除くだけでは安全とは言えないと、研究者の間では考えられている。

一方で、後ほど詳述する戦後の黄変米事件や、カビ毒による七面鳥大量死事件以来、専門家の間では、食品におけるカビ毒の有害性が広く認識されるようになった。私もカビの毒性について質問されると、「カビの生えた食品は食べてはいけない」と言ってきた。

しかし、カビの毒性に関する市民の意識は、なかなか変化しなかったのである。食べてもおなかが痛くなるわけではないカビの慢性毒性を、市民に理解してもらうのは簡単ではなかった。それでも、冷凍保存などが普及し、カビの生えた食品が減少するとともに、市民のカビに対する見方は次第に厳しくなっていった。

21世紀になって、食品中のカビ毒が社会問題になった1つの事件があった。2008年に起きたコメの不正転売事件だ。

大阪市に本社を置く食品会社が、残留農薬やカビが生えたため事故米とされる米を、偽って食品メーカーや焼酎メーカーなどに卸しており、最終的には農水省の大臣が辞任するまでに至った。このとき米に含まれていたのがアフラトキシンというカビ毒だ。強い発がん性があるとされ、テレビなどでも大きく扱われて、社会問題となり、輸入穀物の買い控えを助長した。

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