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鉄道法令、なぜ「文語体カタカナ」にこだわるのか 新設の条文なのに「口語体ひらがな」を使わない

東洋経済オンライン / 2021年7月7日 8時30分

それならばいっそのこと全部「口語体ひらがな」に変えてしまえという意見もあろう。たとえば、大正時代につくられた地方鉄道法は、国鉄民営化の流れの中で1986年に制定された鉄道事業法に取って代わられたが、その際、「文語体カタカナ」から「口語体ひらがな」に変身を遂げた。

東海道新幹線の開業にあわせて1964年に制定されたいわゆる新幹線特例法は、鉄道営業法の特別法として新幹線にのみ適用されるものであるが、元となる鉄道営業法と異なって「口語体ひらがな」である。

しかし、法律の内容を変えずに言葉遣いを変えるといっても、言葉が持つ意味が変わらないかどうかの確認は必要であろうし、せっかく現代語に変えるのなら現代に即した内容も盛り込んだほうがよい、ということになろう。全体を変えるとなると今の時代に各条文が適合するかどうかも検討する必要がある。

そうすると単純に言葉遣いを変えるといっても法令全体でその点検や議論を行うのには相当な労力を要する。大改正の必要に迫られれば別であろうが、それほどの必要性がなければあえて変える必要もないということになるのであろう。

現代に適合するかどうか、ということでいうと、たとえば、鉄道営業法第24条で定められている「鉄道係員が職務中に旅客などに失行があったときは罰金」という規定が私は気になっている。

刑罰は、何をすると罰せられるのかを明確にするために犯罪行為をはっきり規定する必要があるが、「失行」というのは実にわかりにくい言葉である。「失行」の意味には「過った行為」「人の道にはずれた行為」というものがある。しかし、「人の道に外れた」とは抽象的である。

人によっては「挨拶ひとつしないこと」も人の道に外れた行為ということもあろうが、それで罰金に処せられたら冗談ではないだろう。では、これを削除するかどうか、ということになると、そこでまた議論が生じてそんな簡単な話ではなくなってしまう。

■法令だけが古いまま

私が司法試験の勉強を始めた1990年代の初めころ、「口語体ひらがな」の憲法はとても読みやすかった。一方で、今でこそ「口語体ひらがな」になったが、民法も刑法も民事訴訟法も破産法も商法もまもなく21世紀になるのに「文語体カタカナ」の世界が広がっていた。読みにくかった(私は憲法だけは成績が割とよかった)。

民法や刑法、商法などの主要法令がその後「口語体ひらがな」に変わったのは、やはり社会生活、経済活動に直結するからであろう。その意味では、鉄道営業法を筆頭に鉄軌道に関する法令は、事業者がわかっていればよい、という考え方があるからなのかもしれない。

しかし、鉄道に興味を持つ者としては、古い鉄軌道の法令が時々部分的にいじられて、しかし大きな議論もされず放置されているというのは釈然としない。100年以上前、小さな蒸気機関車から始まった鉄軌道は、重要な交通機関として全く別物と言っていいくらい進化を遂げた。技術面だけでなく、法令面でも古い法令が進化を遂げる姿を見てみたいものである。

小島 好己:翠光法律事務所弁護士

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