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トヨタが「EVに消極的」の見方が短絡的すぎる理由 電動化には超積極的だし着々と手は打っている

東洋経済オンライン / 2021年7月9日 10時30分

このあたりは、まさにビジネスとしての計算だろう。現状、とにかくBEVは儲からないというのが定説である。特にリチウムイオンバッテリーの価格は高止まりしており、これを積むとなると当然、車両価格は大いに跳ね上がる。

分水嶺と言われる1kWh/100ドル(約1万円)を切るところまできたとしても、60kWh積むBEVはバッテリーコストだけで60万円、それに電気モーターやインバーター、PCUといった機器が必要になり、まだまだ割高。しかも、販売台数だってどれだけが見通せるのか、誰も皆目検討がつかないというのが本音だ。

世界中のメーカーがいつまでに何万台の販売をなどと数値目標を掲げているが、これらは多分にIR向けのアピールであって、まだそれだけの数のユーザー候補が手を挙げているわけではないということを忘れてはいけない。

そうした状況を考えれば、顧客のニーズに迅速に対応できるリードタイムを短くするのはもちろん、開発コストを圧倒的に圧縮できるに違いないPHEV/HEVとの共通化も納得だ。このトヨタの姿勢は決してBEVに後ろ向きなわけではなく、本当に購入してもらえて、そしてビジネスが持続できる枠組みを着々と整備していると見るのが正しいのではないだろうか?

とはいえ性能の面でも、PHEV/HEVとの共通プラットフォーム採用だからと言って、妥協するつもりはないようだ。この話とは別に示されたトヨタの電池開発コンセプトでは「安心・安全をいちばんに考える」「そのうえで、エネルギー密度向上など高性能化と低コスト化を進める(コスト・性能は電池単独ではなく、クルマの総合力で)」と述べられている。

その流れで言うならば、トヨタとしてはクルマの総合力、すなわち制御の進化に加えて、空力性能向上、軽量化といった車体側の改善によって、共通プラットフォームの弱点となるだろうバッテリー容量なども十分補えると考えているようである。

■レクサスBEVの競合はテスラであり欧州プレミアム

ただし、最初に書いたようにレクサスには新しいBEV専用プラットフォームを入れていく。何しろ相手はテスラであり、海外プレミアムメーカーだ。ここでスペック的に比肩できる品揃えがないのは戦いの放棄であり、ここはしっかり勝っていけるよう準備を進めていると見ていい。

実は対テスラということで、まずはひと通りBEVのラインナップを揃えたドイツ勢も、BEV専用プラットフォームの展開はまさにここからが始まりだ。メルセデス・ベンツのEVA(Electric Vehicle Architecture)は、先日発表されたEQSで初めて採用されたばかりだし、ポルシェとアウディが共同開発中のPPE(Premium Platform Electric)の初出は、2023年発売の次期型ポルシェ マカンとアウディQ6 e-tronになる。本当の勝負はここからだ。

何度も記してきたように、トヨタが目指しているのはあくまでカーボンニュートラルであり、決して全車両のBEV化ではない。実際には内燃エンジン車やHEVの一層の効率化、PHEVラインナップの拡大、そしてFCVへの注力なども並行して力を入れているわけだが、こうしてBEV戦略を見ても、決して消極的なんかではないということがわかる。

トヨタの、「欲しい人」「必要な市場」には、求められるクルマをしっかり届けていくというフルラインメーカーとしての覚悟、ここにもしかと表れているのである。

島下 泰久:モータージャーナリスト

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