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ソニーの映画「劇場ヒット」頼らず稼ぐ変貌の裏側 あらゆる媒体へと映像コンテンツを届ける

東洋経済オンライン / 2021年7月17日 13時0分

そしてついに、当時のMCA/ユニバーサルから、ベータマックスは著作権法違反だとして訴訟を起こされてしまう。裁判は長期化し、8年もの長期審理でようやくソニーが勝訴した。

ソニーが批判にさらされている間、松下電器(現パナソニック)はベータマックスに対抗する「VHSビデオ」を市場に投入、メディア大手はVHS支持に回ってしまった。

■必要なのはハードと特許よりも魅力的なソフト

このとき、盛田・井深・大賀の3巨頭は、技術的に優れた電化製品と特許だけではアメリカを制することはできないと痛感した。そこで至った結論が、ある製品のフォーマットを消費者に浸透させるためには、映画や音楽などの魅力的なソフトを手に入れることがどうしても必要、というものだった。これが、当時はエレクトロニクス製品を中心に展開していたソニーが、音楽のCBSレコードやコロンビアピクチャーズの買収を決断した理由である。

もっとも、コロンビアピクチャーズの経営では、当初招いたトップが放漫経営を続け、多額の費用を私的に使うなど危うさも目立った。しかし、出井伸之社長時代に経営改革を断行し、何とか経営を立て直した。

私がテレビ局の記者としてニューヨークに駐在していた1990年代当時、こうしてハードもソフトも手に入れたソニーの輝かしい現場を何度か見る機会があった。1993年5月には、大賀典雄社長(当時)がニューヨークシティーオペラの指揮を執ったこともあった。

大賀社長はもともと音楽家で、東京藝術大学、ベルリン国立高等音楽大学を卒業後ソニーに入社したという経歴の持ち主。音楽の殿堂・リンカーンセンターのホールで行われた演奏会には、当時人気のあった歌手のバーブラ・ ストライサンドさんやビリー・ジョエルさんも駆けつけ、大盛会だったのを覚えている。これだけアメリカ社会に浸透しているソニーを、われわれ日本人の駐在員も誇らしく思ったものだ。

こうして事業領域を拡大したソニーは今年、経営方針として「10億人の顧客と直接つながる」ことを目標に打ち出した。映画事業は劇場からテレビまであらゆる媒体へ、ソニーの映像コンテンツを提供する重要な役割を担う。稼ぎ頭のゲーム事業とのシナジーも大きい。映画事業が、ゲームや音楽に続く収益柱になることも不可能ではない。

『週刊東洋経済』7月17日号(7月12日発売)の特集は「ソニー 掛け算の経営」です。

大原 通郎:デジタルメディアウォッチャー

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