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どこが復興五輪?「被災者は今も放置」残酷な現実 コロナだけでなく原子力緊急事態宣言も発令中

東洋経済オンライン / 2021年7月23日 7時30分

庄司さんには、忘れようにも決して忘れられない出来事がある。

2017年6月。除染作業の初出勤を控えていた。家族と別居する前日の夜、庄司さんは長岡市の避難先住宅で4人の子どもたちに夕ご飯を食べさせ、食後は他愛もない雑談でくつろいでいた。長女、次女、次男が自分の部屋に戻っていく。

庄司さんも自分の部屋に戻り、座椅子に座った。すると、障子が開き、中学3年生だった長男の黎央(れお)さんが「お父さん、もう(南相馬に)帰っちゃうの」と言う。いつもは言わない言葉だよな、変だな、と思った。少し弱々しい。そういえば、この1週間、ずっと口数が少なかった。

「うん、来週から仕事だからね」

「いつ帰ってくるの?」

「まだわかんない」

いつ帰ってこられるか、実際に仕事に就いてみないとわからなかった。

その4日後。南相馬での初出勤の日、まだ眠っていた早朝に携帯電話が鳴った。長女の声で「黎央が、黎央が」。それだけ言って電話は切れた。次は妻からだった。「黎央、死んじゃってる」。

長岡に戻ると、医師も警察官も家から引き揚げた後だった。庄司さんはその日、眠れずに過ごしたという。通夜の席では、女子の同級生3人が「お父さんが大好きだって言ってました」「一緒にいられなくなって寂しいって」と言っていたが、遺書はなく、本当の理由はわからない。庄司さんは「なぜ」という自問を繰り返すしかなかった。

その後庄司さんは妻と離婚し、1人で南相馬市に戻っている。「自分のせいだ」と自らを責め、うつになり、半年ごとに入退院を繰り返す。「こころのケアセンター」の訪問支援を受けているが、精神状態は一進一退だ。

この7月、筆者が電話し、「今月の25日に会いに行きますよ」と約束した際にも「そのときまでは生きていないと思います」と口にしていた。

■重度精神障害相当の人は全国平均の2倍近い

原発事故に関わる、深い心の傷――。

庄司さんのような被災者は、決して珍しくない。避難指示が出た12市町村などの約20万人を対象に福島県が毎年実施する健康調査(2019年実施版)によると、回答者3万0674人のうち、5.7%が重度精神障害相当となった。

年ごとに徐々に減ってきてはいるものの、平常時の全国平均(3%)の2倍近くという状態が続く。そうした中、帰還困難区域の住民と原発周辺の年間世帯所得600万円以下の被災者に対して継続されていた医療費の一部負担金免除措置も打ち切られようとしている。

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