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日本人は最低賃金を抑え込む事の弊害を知らない 労働者を買い叩き続ける限りデフレは終わらない

東洋経済オンライン / 2021年8月31日 10時30分

2.経営判断による最低賃金の意図的な抑制

日本企業は、現在でも終身雇用制にこだわるところが多く、若年層の正社員に対しては数を絞って、単純作業などは正社員ではなく非正規社員に依存する経営方針を固めたため、意図的に最低賃金を低くしていると考えられる。

こうした背景には、雇用する側が強い力を持っていて割安で労働力を調達できる状態がある。いわゆる「モノプソニー」と呼ばれる状況だが、早い話が小泉政権時代に進められた非正規雇用に対する大幅な規制緩和に由来するものだ。

3.「個人消費の拡大=景気回復」を意図的に避けるため?

最低賃金が上昇すれば、個人消費が拡大し景気が回復する。景気が回復すれば金利上昇を導き出し、現在政府が抱えている財政赤字の利息負担が拡大する。そうした状況を意図的に抑えるために、あえて最低賃金制度のあり方を含めて政府が放置してきたと考えることもできる。

たとえば、現在の普通国債残高の累積は2021年度末には、990兆円に達する。利払い費だけで、同じく2021年度末には8兆5000億円に達する。現在は、日銀がマイナス金利政策を実施しているために、利払い費はこの程度ですんでいるが、金利が1%上昇しただけで利払い費はあっという間に跳ね上がる。

日本銀行が、簡単に金融緩和策を解除できないのも、この国債費という縛りがあるからだ。仮に、最低賃金を毎年10%ずつ、3年間で30%上昇させたら、いったいどんなシナリオになるのか。こればかりは、やってみないとわからないのだが、成功しても、失敗しても、財政的には途方もないリスクといっていいだろう。

■放置すれば貧富の格差拡大、経済低迷に

4. 失業率の上昇は社会保障制度の崩壊につながる?

日本と欧米諸国との違いがあるとすれば、人口減少や莫大な財政赤字ぐらいだ。仮に、最低賃金を短期間で10%前後も上昇させたら、確かに雇用は大きな影響を受け、失業率や企業の倒産件数は上昇するかもしれない。

それでも、欧米諸国は最低賃金上昇を選択したわけだが、日本の場合、2021年6月現在の失業率(2.9%)や完全失業者数(206万人)の水準をはるかに超えるレベルの景気悪化が待っているかもしれない。一方で、ゾンビ企業をいつまでも退場させないほうがよほど大きな問題を抱えていることになかなか気づいていないという側面もある。

いずれにしても、最低賃金の低迷は「貧富の格差拡大」を招き、貧困層を増やすという負の連鎖を招く。労働の生産効率を低迷させ、転職を阻み、産業構造の変化や技術革新のスピードを遅らせる。

日本の未来を考えれば、一か八かで最低賃金を大幅にアップしてみるのも、ひとつの選択肢かもしれない。

岩崎 博充:経済ジャーナリスト

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