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時代映すヒットCMから読み解く「家族像」の大変化 かつては「亭主元気で留守がいい」、今は?

東洋経済オンライン / 2021年9月6日 19時30分

テレビCMが家族をどう描いてきたのか、その変遷を解説します(写真:zon/PIXTA)

テレビCMのなかにも、さまざまな家族が登場する。ドラマなどの番組コンテンツ以上に、時代の変化に敏感ともいえるCMクリエイティブは今、家族をどう表現しているのか。ギャラクシー賞CM委員である汲田亜紀子氏に、ヒットシリーズや最近作を例に分析してもらった。

■主婦の本音を赤裸々に表現したキンチョウのCM

「タンスにゴン 亭主元気で留守がいい」。1986年にキンチョウ(大日本除虫菊)が放ったこのテレビCMは、一世を風靡しコピーは流行語となった。

時代はバブル前夜、夫は昼夜なくがむしゃらに働き、一向に家庭を顧みなくなった。そのことに異議申し立てするのではなく、むしろ逆手にとって「だったら自分たちも好き放題しましょうよ」という、妻たちの開き直りの宣言だった。

主婦の本音を堂々と、赤裸々に表現したこの言葉(コピー)が、女優・木野花の不敵な笑みとともに語られるのを見て、テレビの前の妻たちは溜飲を下げたに違いない。令和の現在においてもこの言葉は普遍的な力を持ち、主婦同士の会話で慣用句のごとく使われている。

CMは、視聴者の心の奥底にある想いに光を当て、絶妙なメッセージを投げかけてくる。「家族」という身近でありふれた関係も、CMを通して語られると、新鮮な輪郭が浮かびあがる。

そんなCMのなかに描かれている家族の姿を読み解いてみたい。

東京ガスの「家族の絆」は、2008年から今も続くシリーズCMである。料理をテーマに家族の物語を綴り、いずれも名作ぞろいだ。「お弁当メール」(2010年)は息子のお弁当を作り続ける母の姿を描き、数々の賞を受賞した。思春期の息子のために作るお弁当を、母からのメールに見立てているのが秀逸だ。

応援、激励、お祝い、季節の移り変わりなど、毎日のお弁当に込めた母のメッセージ。息子からの返信は、テーブルの上にそっけなく置かれた空になった弁当箱だけ。それをおいしく食べてくれた証と喜び、来る日も来る日も弁当を作る母の姿に涙腺が緩む。最後の日は自分にもお弁当を作り、味わいながらわが身をねぎらう母。そして戻ってきた最後の日の弁当箱のなかに、ぶっきらぼうな息子からの感謝の手紙を見つけるラストシーンに、涙が止まらなくなる。まるで一編の映画を観るようだ。

このシリーズが描く一つひとつのエピソードは、平凡な日常の風景である。しかしその日常が繰り返されることによって、家族の絆は確固たるものになっていく。料理をひたすら作り続ける行為がいかに強く家族を結びつけるものであるか。そのことが実感としてひしひしと伝わる。

■定点観測的な手法で家族の歴史を描く

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