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牛めしの松屋が「弁当専門店」に手を出す事情 コロナ禍で外食大手が中食事業に本格参入

東洋経済オンライン / 2021年9月14日 8時0分

「持ち帰り需要の訴求」という狙いだけでなく、松弁キッチンには中長期を見据えたさまざまな狙いがある。

1つ目は、将来的な単店での出店だ。松弁キッチンは約3坪と小規模であるため、駅ナカや商業施設などこれまで松屋フーズが出せなかったような立地に出店できる可能性を秘める。

だが、いきなり単店で出しても、ブランド力が足りず店舗網を広げるハードルは高い。そのため、知名度がすでに確立されている松屋や松のやなどのブランドに併設することで認知度をあげた後、将来的には単店での展開もにらむ。

2つ目が新規顧客の囲い込みだ。「男性の個人客」が多いイメージの牛丼業界だが、顧客層を広げるために大手3社はさまざまな策を打つ。

先を行くのが、最大手のすき家だ。従来ファミリー客でも気軽に利用できるように、テーブル席が多く、子供向けメニューも充実している。吉野家も、ソファやテーブル席を充実させたカフェのような内装の店舗への改装を進めるほか、ポケモンとコラボした商品「ポケ盛」を投入するなど、女性や家族客などの取り込みに力を入れる。

松屋も同様に店舗の改装や、ライスを生野菜に変更できる「ロカボチェンジ」などの施策を打つものの、ファミリー客や女性客を対象とした施策が競合に比べて遅れているというのが実情だ。

弁当専門店である松弁キッチンには、松屋が得意とする20~40代の男性客だけでなく、女性、高齢者、ファミリーといった幅広い客層を見込む。「松弁キッチンで、松屋と松のや両方のメニューが混在する『オリジナル弁当』を注文してもらい、そのおいしさを知ってもらえれば、今度は店舗の方に足を運んでもらえる」(浜野氏)。

■外食企業の中食参入が相次ぐ

時間短縮営業や休業要請の長期化により、外食業界が苦戦を強いられる一方、弁当・総菜専門店市場は底堅く推移している。

市場全体の売上高は、コロナ影響のなかった2019年の月次と比較しても、2021年5月は4%増、同6月は1%減、同7月は1%増だった(市場調査会社エヌピーディー・ジャパン調べ)。販売チャネルの多角化という観点からも、中食への本格参入を果たす外食企業は増加の一途をたどる。

定食チェーン「大戸屋ごはん処」を展開する大戸屋ホールディングスは、2021年2月末に同社初の総菜小売業態「大戸屋 おかず処」を投入。西武池袋本店やそごう横浜店への催事での出店を皮切りに、さまざまな立地で実験を続けている。

「てんや」「ロイヤルホスト」などを運営するロイヤルホールディングスもフローズンミール「ロイヤルデリ」の売り上げ拡充をもくろむ。てんややロイヤルホストでの店頭販売に加え、自社のネット通販、百貨店での展開に力を入れる。2020年度に3億円ほどだった、ロイヤルデリの売り上げを、約3年で40億~50億円にまで引き上げる構えだ。

コロナ感染拡大当初の2020年前半は「巣ごもり需要は一過性のもの」と切り捨てる企業も多かったが、コロナ禍が想定以上に長引くなか、本格的に中食での事業化を見据える外食企業は後を絶たない。内食・中食・外食の垣根が低くなるなか、胃袋をつかむ闘いは熾烈化を増すばかりだ。

中尾 謙介:東洋経済 記者

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