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「モノ申す財務次官」はなぜ論文を発表したのか 香取・上智大教授に聞く「政治家と官僚の関係」

東洋経済オンライン / 2021年10月25日 10時0分

――香取さんは「はっきり物を言う官僚」として有名でしたね。

民主党政権時代を含めて、私も多くの政治家に仕え、大臣や議員の方にはずいぶん嫌われることを言った。僭越なやつだと思った議員もいたと思う。しかし、それを人事で報復するということをした人は1人を除いていなかった。それは政治家の側にちゃんと度量があったということ。意見の違う者の話も聞いて議論し、そのうえで「君の言うことはわかったが、私はこう考えるからこうやる」と言えば、官僚は従う。政治家は官僚の上司なのだから。

最後は自分で決めるという前提で政治家は議論しているし、官僚もその前提で物を言う。だから、「大臣、それは違いますよ、気持ちはわかりますが、思い込みです」と、官僚は耳の痛いことも言わないといけないことがある。政策を決めるプロセスでどれだけ議論しているかがすごく大事で、それができていれば、政治家と官僚の間にいい意味での緊張と信頼、そして協働関係が生まれる。

■「自分がいちばんよく知っている」政治家

――そうした信頼関係はその後、崩れてきたのでしょうか。

たとえば、官僚ときちんと議論できない政治家のタイプがある。自分のほうが官僚より詳しくて偉いと考える人だ。「官僚は、政治家には言わないしがらみや固有の利害があるから政治家の言うことを聞かないのだ。私がこうと言ったら、そのとおりやれ」という感じだ。

省庁の官僚は、大臣の部下だから理不尽なことでも大臣の言うことを聞くかもしれない。しかし、その先の国民や市町村は大臣の部下ではないのだから言うことを聞かない。大臣が「言うことを聞かせろ」と言っても独裁国家ではないからできない。それを見た大臣は「官僚のサボタージュだ」と言う。こんなことをいくらやっていても不毛なだけだが、こういったタイプの政治家は官僚を信用していないので人の意見を聞かない。

すると、人の意見を聞かない人には言っても仕方がないので、官僚は何も言わなくなる。「政治家が決めて、官僚はそれに従え」というだけであれば、官僚は物を考えなくなるし、「明らかにこの政策はおかしい」と思ったときでも何も言わなくなる。そういう大臣に何か言おうものなら、人事で報復される。そして政策で失敗しても「だって、大臣が決めたことをわれわれは言われたとおりやっただけですよ。大臣の責任で、私の責任ではない。それが政治主導ですよね」となってしまう。

これは最悪だ。役人たちが自分のやっている仕事に責任を持たなくなる。もっと言えば、そういう役人のほうが出世で生き残るという状況になり、壮大な無責任体制になっていく。

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