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米中対立を「中立的サプライチェーン」で生き残る 「生産分散」「技術的中立性」「地産地消」の3条件

東洋経済オンライン / 2021年10月26日 11時30分

そこで、筆者は自由貿易協定(FTA)のフレームワークを使って経済界主導の中立性を認証する機関(中立化委員会)を設置するのが最適だと考えており、現在の11カ国で運用中の環太平洋パートナーシップ(TPP)に中立化委員会を設置するのはどうであろう。TPP原加盟国が同意して民間主導の中立化委員会を設置し、アメリカのTPP復帰も中国の加盟もこの中立化委員会の存在と役割に同意することを加盟の前提とするのである。

さらに、TPPに加盟なり復帰するのであれば中立化認証の枠組みに当事国が入ることは望ましくないので、恣意的な認証を回避するためにもアメリカも中国も委員会には入れないほうがいいであろう。いずれにしても、初期段階はTPPの枠組みでスタートし、いずれTPPに加盟していない国、例えば韓国や台湾(関税地域として)、タイなども加えた認証団体に育てていくのである。

かつてTPPの機長席にいたアメリカは離陸直前に降りてしまい、離陸後のTPPの操縦席に座っているのは日本である。米中デカップリングの危機に際して、日本ができることはサプライチェーンを守り、育てることであり、そのためには制約の少ない高次元の自由貿易の土台が必要である。

さて、中立的なサプライチェーンについて荒唐無稽なアイデアを述べたが、筆者は案外本気である。日本企業は東西冷戦後の自由貿易の中でアジアを舞台に多国籍化を急速に成し遂げた。冷戦終結後30年の間に謳歌した大きな世界市場と自由貿易は米中対立によって再び分断される可能性がある。中立であることは平時でも有事でも意味を持つ企業戦略であり、中立化が進展すればするほど、対立の当事国はデカップリングがいかに不毛であるかに改めて気づくはずである。いや、気づいてほしいのである。

池部 亮:専修大学商学部教授

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