日本の経済安全保障「金融」巡る重要な3つの観点 インフラ金融、通貨、金融制裁をめぐる攻防
東洋経済オンライン / 2022年1月10日 9時0分
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。
■経済安保とインフラ金融、通貨、金融制裁
「経済安全保障」と言ったときに多くの人が思い浮かべるのは、輸出管理、対内投資審査、サプライチェーン強靭化、先端技術研究開発といった項目であろう。これらは重要だが、それらに加えてインフラ金融、通貨、金融制裁なども、経済安全保障の観点で欠かせない。
自由民主党の提言「『経済安全保障戦略』の策定に向けて」では、経済安全保障を「わが国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」と定義する。金融、通貨を含めた国際経済の枠組みが、そのルールや運用において、日本の独立・生存・繁栄を守るように形成・維持されることは日本にとって重要な課題だ。
■一帯一路とその問題
中国によるインフラ金融支援のイニシアティブである「一帯一路」に関して、中国の公式文書は「相互利益とウィンウィン」を強調する。実際には中国にとっては、
① 国内の過剰生産能力のはけ口としての経済的利益
② 対外的影響力強化を目指す地政学的利益
③ 習近平主席の威信の発揚
といった狙いがあろう。
「一帯一路」は、アメリカをはじめとする国際社会から「債務外交」「債務の罠」と厳しく批判される。スリランカのハンバントータ港は、十分な収益を上げられない中で所有権が中国側に移転、「債務の罠」として注目を集めた。
また、中国の「一帯一路」融資は、情報開示が不十分なこと、借入人が集団的な債務再編に参加することを禁ずる特異な条項(非パリクラブ条項)を融資契約に含めるケースが多いこと、なども研究者が指摘し、批判を招いた。
ハンバントータ港の経緯を見ると、経済性の低いプロジェクトを、必要コストを膨らませながら企画・主導したのはスリランカ側だ。しかし、そこに資金を注ぎ込み経済性のないプロジェクトを成立させたのは中国だ。スリランカの腐敗の中に、地経学利益の機会を見いだし利用した点で中国は加害者であり、被害者は経済性のない港湾のために借金を負ったスリランカ国民と言えよう。
■一帯一路の改革と西側の対応
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