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「1回の失言で政権交代招いた」ある政治家の失態 「とうとう東京渡辺銀行が破綻しました」

東洋経済オンライン / 2022年1月15日 20時30分

しかし、野党の立憲政友会などが「この法案は税金を使って、一部の企業だけを救おうとするものだ」と強く反発、大荒れとなった。その過程で、銀行の経営状況の悪さも明るみに出てしまう。ただ、どうにか法案は翌4日に衆議院本会議で可決され、貴族院へ回付された。

■片岡直温のとんでもない「大失言」

3月14日、衆議院の予算総会の場において、片岡直温蔵相は法案の説明をしていた。これに対して、野党・立憲政友会の吉植庄一郎議員から「銀行が破綻した場合に、政府はいかなる手段を取るのか」という質問を投げかけられた。

自伝で片岡は「極めて抽象的なる質問を試み、得意の毒舌を振ふて、毫も(少しも)仮借するところがなかった」(片岡直温著『大正昭和政治史の一断面 続回想録』西川百子居文庫)と立腹しているが、質問内容を読んでもあまり違和感は覚えない。

ただ、片岡にとっては、攻撃的に聞こえたのかもしれない。それで動揺したのか、この質問に対する答弁で、片岡直温蔵相は、信じられない言葉を発した。「今日の正午頃、とうとう東京渡辺銀行が破綻しました」と言ったのだ。

銀行の経営が危ないと噂されているさなか、なんでそれを言ってしまったのか、もうちょっと訳がわからない。思わず焦ったのだろうか。

高知県出身の片岡は、小学校の教員から滋賀県警察部長を経て、内務省に入るという異色の経歴の持主である。政府を下野した後は、日本生命保険会社や都ホテルの社長として実業界で力をふるうとともに、政治家としても活躍、第二次加藤高明内閣の商工大臣を経て若槻内閣の大蔵大臣に就いた。それまでは政治家として、とくに瑕疵はなかった。だからこそ、意外な言動といえた。

ともあれ、失言の数時間前、東京渡辺銀行の重役が大蔵省に来て、決済ができなくなって破綻に瀕している事実を報告し、あわせて大蔵省に支援を求めたのである。

だが、話し合いがつかず、大蔵省は力添えをしなかった。しかも東京渡辺銀行の状況は、大臣の片岡にそのまま報告された。だからこそ、ポロリと口からこぼれてしまったわけだ。

しかし、その後、東京渡辺銀行は、必死の努力によって持ち直し、営業を再開していた。なのに片岡が、こんな発言をしたことで、本当に休業に追い込まれることになった。

発言の意図について片岡本人は、自伝の中で、「予算委員会でこの発言をしたのは午後4時すぎで、すでに銀行の業務は終了していたので問題はなかった」と主張し、さらに、銀行を「監督を致して居る者が、其の監督を受けて居る者よりして、届け出でました時に、之を公に致すと云ふことに於いて何等不都合はない」(以上、前掲書)と断言している。

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