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中央線にも連結へ「通勤グリーン車」海外最新事情 香港の「頭等」、ドバイは路面電車にも上級席

東洋経済オンライン / 2023年11月3日 6時30分

JR中央線快速に2024年度末以降導入される予定の2階建てグリーン車(写真:Pirlo21/PIXTA)

JR東日本の中央線快速電車に2階建てのグリーン車が連結される。すでに完成した車両もあり、2024年度末以降のサービス開始を予定している。首都圏のJR各線では東海道線や高崎線、宇都宮線など各線で2階建てグリーン車を運行しているが、中央線快速は中距離電車の他線と比べて駅の間隔が短い「通勤電車」で、車両は乗り降りの時間を短縮するため、2階建てグリーン車としては初の両開き扉になっている。

【写真】香港MTR東線のファーストクラス「頭等」。中国・深圳では地下鉄の一部に優等車両。日本のグリーン車とはどう違う?

海外の「優等車両」どうやって乗る?

日本以外の各国にも、グリーン車のような優等車両を連結して走る通勤電車がある。JR東日本のグリーン車はSuicaなどのICカードで座席上のセンサーにタッチして利用する形だが、海外ではどんな形で特別料金を課金しているのか。筆者が体験した各国の例を紹介したい。

アジアで代表的な例は、香港の鉄道として最も古くから走っているMTR東線だ。かつて九廣鉄路(KCR)と呼ばれていた同線の歴史を遡ると、イギリス統治時代の1910年に開業しており、100年以上の長きにわたって住民の足となってきた。歴史的にイギリス本土では大半の列車に1等車が連結されていることを反映し、中国への返還からすでに25年以上経っているにもかかわらず、今も9両編成に1両のファーストクラス(頭等)車両を連結している。

車内の設備は、一般車両が金属むき出しのロングシートなのに対し、ファーストクラスは全席クロスシートで薄いながらもモケットが掛かっている。座席指定はないが、それでも出退勤時間には「座れなくてもファーストクラスのほうが混み具合が緩い」とあって、香港北部の新界(ニューテリトリーズ)地域から都心へのビジネスパーソンの利用が多い。

利用者がファーストクラスに乗車する際は、ホームにある専用センサーに非接触式ICカード「オクトパスカード(八達通)」をタッチして乗る。料金は通常料金の2倍だ。ICカードをタッチする点は首都圏のJRグリーン車と似ているが、異なるのはタッチするセンサーが座席ではなくホーム上にある点、そしてグリーン車のように、ホームにある券売機でICカードにグリーン券の情報を書き込んだり、事前にチケットを購入したりする必要はなく、センサーにタッチするだけで特別料金が引き落とされ、乗車できることが特徴的と言えようか。

香港の場合、ユニークな仕組みがある。車内が混み合っているとき、着席したいと思う乗客はファーストクラス車両端の連結部に備えられたセンサーにICカードをタッチして、ドアを開けて入れば乗車できる。首都圏JRのグリーン車では、ピーク時にはグリーン車と普通車の間を閉めるという方策を取っているが、香港ではいわば「日本の逆」といった格好となっているのが興味深い。

香港と隣接する中国広東省深圳市を走る地下鉄路線の一部にも同様の優等車両連結列車が走っている。国際空港と市内中心地を結ぶ区間で運行されており、香港とほぼ同じ仕組みで利用できる。どちらも基本運賃に優等車両に乗車するための追加料金を払う「上乗せ」の形なので、日本のグリーン車のスタイルに似ている。

ドバイは路面電車にも「ゴールドクラス」

地下鉄、さらにはトラム(路面電車)にも優等座席があるのがアラブ首長国連邦(UAE)のドバイだ。地下鉄の片側一方の先頭車が「ゴールドクラス(Gold Class)」と呼ばれる上級車両となっている(ちなみに、もう片方の先端車は女性専用車両)。利用料金は普通車の運賃に追加分を支払うのではなく、改札外であらかじめゴールドクラス用のチケットを購入する。

車内設備を比べてみると、普通車がロングシートや2人掛けクロスシートがメインなのに対し、ゴールドクラスは1人掛けシートが並列または単独で設置されている。テーブルが付く仕様もあってなかなか快適だ。

多くの旅行者が利用する1日乗車券にもゴールドクラス用があり、価格は普通車用20AED(約820円)の倍額に当たる40AED(約1640円)だ。もともとの電車賃が安いという背景もあり、ゴールドクラスは展示会参加のビジネスパーソン、あるいはバカンス客を中心に一定の需要があるようだ。ドバイメトロは無人運転であり、観光客にとってはゴールドクラス車両の先頭車に乗れば沿線のパノラマが存分に楽しめるという利点もある。

ゴールドクラス乗車の際、ホームや車両には検札機に当たる仕掛けは一切ないが、かなり頻繁に乗務員がチェックに回ってくる。トラムは住民の身近な乗り物という意味合いが強そうだが、観光客の利用が見込まれる区間に走っていることもあり、それなりの需要があるようだ。

イギリスの1等車は「定期利用者」が多い?

実例の最後として紹介したいのは、イギリス・ロンドンの近郊列車だ。イギリスの鉄道は今は民営化されているものの、旧国鉄時代からの習慣か、短距離列車でも1等席が設けられている編成がある。さすがに1両すべてを優等席にするほどの需要はないとみられ、運転台のすぐ後ろに定員8人分の小部屋を作り、そこを1等席としている。

イギリスでは乗車券がそもそも「1等用」と「普通(2等)用」とに分かれており、日本のようにグリーン車乗車区間ごとに追加料金を加算するシステムではない。1等料金は、ロンドンとその近郊をカバーする通勤電車の場合、2等料金と比べて片道10〜11ポンド(約1830~2020円)ほど高い。

問題は課金のシステムだ。ホームを含む駅構内には1等席利用のための承認用マシンや着席券販売機といったものはなく、利用するなら自販機で1等運賃の紙のきっぷを購入しなくてはならない。とはいえ、1等席に着席したところで、列車内で検札している様子も見たことがない。

ではいったい誰が乗っているのか。すべての1等席利用者に尋ねたわけではないが、多くは「1等席定期券」で乗車しているとみられる。1等席ならまず間違いなく座れるので、金銭負担を増やしてでも、着席して仕事の整理ができるのは時間の有効利用にうってつけだ。

ユニークなのは、スポーツイベントなどが行われる際には1等席のサービスを打ち切って、一般旅客を1等席の小部屋に入れるという運用がなされている点だ。1等席の意義がより求められるのは平日の通勤時間くらいで、週末はそうした価値がより低いと考えていると言えようか。

では、これらの国・地域の優等席に、有効なチケットを持たずに乗車したらどうなるのだろうか。

日本の首都圏JRのグリーン車は、車内でのグリーン券購入は事前購入料金よりも高いが、その場で支払えば済む。だが、香港ではそうはいかない。前もって料金を払わずに1等席に座っていた場合は罰則が適用され、無賃乗車のペナルティと同額の1000香港ドル(約1万9200円)の支払いを命じられる。ドバイや、そもそも1等と2等で運賃制度が異なるイギリスでも同様に罰金の対象となる。日本の首都圏JRグリーン車と同じ感覚で利用すると大変なことになる。

日本のグリーン車は乗車後でも購入できるため便利だが、今後サービスを開始する中央線快速は東海道線や高崎線などに比べて駅間も短く、短距離の利用者が入れ代わり立ち代わり乗車することが考えられそうだ。その際、有効なグリーン券を持っているかどうかのチェックが課題だろう。

「グリーン車」訪日客は利用しやすい?

ところで、日本を訪れる“インバウンド”の外国人旅行者の目に、グリーン車はどう映っているのだろうか。外国人の動きを見ていると「グリーン車という名称自体が何か指すのか理解しにくい」「ICカードをかざす云々が他国の事例にはないため、それが何を意味するのかわからない」――などの理由で、よく車掌やアテンダントと揉めている様子を目にする。どちらのランプの色が空席を示すのかも一目ではわかりにくいだろう。

かつてのイギリスでは、階級社会の象徴として1等車が連結されていた。ところがロンドンの近郊輸送を担う新型車両の動向を見ていると、1等車の連結列車は消えていく傾向にある。一方、日本ではより快適な通勤環境を目指して、さまざまな有料座席車両が増えている。時代や社会背景により、優等座席への向き合い方も異なるという事実はとても興味深いものだ。

さかい もとみ:在英ジャーナリスト

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