アニメ会社が「あの石油大国」でこぞって狙う金脈 サウジの「オイルマネー」に熱視線が集まる理由
東洋経済オンライン / 2023年11月18日 7時50分
「向こうは新たな“石油”を見つけたと思っているだろうが、こっちは“金鉱”を見つけたと思っている」――。
【図表で見る】オイルマネーで潤うサウジアラビアだが、石油依存脱却を急いでいる
そう話すのは、あるアニメ業界関係者。ここでいう「向こう」とは、サウジアラビアだ。
近年、サウジにおける日本アニメのビジネスが急拡大している。2019年と2022年に現地で開かれたアニメイベント「SAUDI ANIME EXPO」を共催した電通をはじめ、さまざまなアニメ関連企業がサウジでの事業展開を進めている。サウジ企業と日本のアニメ会社との提携も活発だ。
2023年6月には、エイベックスがサウジでIPライセンス・イベントなどを行う子会社を設立予定と発表した。11月中にも正式に立ち上げる方向で進めているという。
契機となった政府の方針転換
ここに来てサウジでのアニメ展開が拡大した背景には、現地政府の方針転換が大きく関係している。
「持続可能な経済成長を実現するためには、経済の多角化が欠かせません。我が国の経済は石油とガスという2本柱に支えられていますが、近年はその他分野もこの柱に組み入れるべく、投資規模を拡大しています」
これは、サウジが2016年に発表した「ビジョン2030」の一節だ。世界最大の原油輸出量を誇るサウジだが、「脱炭素」や「カーボンニュートラル」といった世界的潮流が強まる中、石油依存の経済構造に危機感を抱いているとみられる。
同ビジョンは、GDPに占める非石油製品の輸出割合引き上げなどのほか、2030年までのさまざまな達成目標を掲げている。興味深いのは、その1つとして文化・娯楽活動の促進に触れていることだ。
サウジはイスラム教の影響により、映画館の営業を禁止するなどして娯楽活動を大きく制限してきた。
しかし、ビジョンでは「国内における文化・娯楽活動への支出を、総家計支出の2.9%から6%に引き上げる」という具体的目標を設定。2017年に映画館営業を解禁するなど、国家的な方針転換に踏み切った。
こうした中でサウジが目をつけたのが、日本のゲームやアニメだった。サウジ政府系の投資ファンド、パブリック・インベストメント・ファンドは、2022年から任天堂や、子会社に東映アニメーションを持つ東映の株式の大量保有者となっている。
さらに同国のムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、”アニメ好き”として業界内でも広く知られているほどだ。
皇太子就任を機に進んだ“関係修復”
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