「中国の肺炎拡大」免疫低下以外に懸念される要因 見落とされている「別の問題」を医師が指摘
東洋経済オンライン / 2023年11月30日 7時20分
11月末、中華人民共和国の北京などの北部を中心とした地域で肺炎が集団発生し、患者が増加しているというニュースが世界を駆け巡った。
【図版】中国で報告された子どもの肺炎の集団発生に関するWHOの声明
中国の肺炎拡大に関するWHOの見解
メディアでは、肺炎などの呼吸器疾患が特に子どもたちに多く見られたことを報じている。北京の小児病院では毎日平均7000人の患者が殺到し、天津の最大の小児病院では1万3000人の子どもが救急受診したという。
「まさか、また中国で新たな病原体の発生か」と、不安になる向きも少なくないだろう。
11月23日付の世界保健機関(WHO)の発表では、「増加する肺炎の原因は新しい病原体ではなく、一般的な冬の感染症によるもの」とされている。
筆者は中国の研究者らと30年以上にわたり交流を続けており、2023年5月には4年ぶりに南部の上海に渡航した。そしてついこの間、公衆衛生の研究者らを東京でのシンポジウムに招いたばかりだが、北部で流行するこの肺炎については、特に話題にはならなかった。
なぜ肺炎が中国で流行しているのか。
真っ先に考えられる理由は、2019年末にパンデミックが始まって以降、中国は初めて新型コロナの制限措置がない本格的な冬を迎えていることだ。
すでに新型コロナの制限措置を緩和していた中国以外の国でも、緩和後にはインフルエンザやRSウイルスが増加している。これと同じことが中国で起こっているのだ。
マイコプラズマ肺炎は一般的な呼吸器疾患の1つ
中国の保健当局によると、10月以降に入院患者数が増加している原因は、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなど、すでによく知られている一般的な病原体によるものだという。
そもそも冬にインフルエンザなど呼吸疾患が多いのは普通のことで、内科や小児科の外来は、特に冬場に混み合う。筆者が勤める医療機関も同様で、朝から夜まで風邪症状の患者の治療にひっきりなしに当たっている。
北京などの北部都市ではマイコプラズマ肺炎による入院が増えているものの、中国当局はこれまでのところ、肺炎の増加はこれらのすでに知られた病原体が原因であるとしており、「新型病原体は確認されていない」としている。
マイコプラズマ肺炎は、昔からよく知られている一般的な呼吸器疾患の1つで、耳にしたことのある方も多いだろう。マイコプラズマ・ニューモニエという病原体によって起こる。
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