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日清食品「完全メシ」、独自技術駆使し狙う定番化 「カラムーチョ」が栄養食?可能にする技術とは

東洋経済オンライン / 2023年12月8日 8時0分

栄養素の苦みやエグみを覆い隠すには、「マスキング」の技術を使う。麺の中心層の一部に小麦粉の代わりに食物繊維やたんぱく質を使用することで、味への影響を軽減させる技術だ。

スパイスなどでの調味もポイントになる。ここで活躍するのが、食材や調味料などの栄養素情報を蓄積した日清食品独自のデータベースだ。商品開発の過程で味をこうしたい、具材を変えたいという場合、一般的に大量の計算が必要になるが、同社はこれをシステム化し効率化している。

健康のためには減塩が求められるが、塩分はおいしさの要素でもある。日清食品は世界中から約170種類の塩を集めて味や成分を分析。完全メシにミネラルやアミノ酸を配合することで、少量の塩でもおいしく感じられるようにした。

ほかにも冷凍の完全メシであるカツ丼では、ノンフライ麺で使う技術を応用して脂質などを抑制。米には栄養素と一緒に炊いて栄養価を上げる、食物繊維を強化する、などの製法も用いられている。

日清食品は完全メシで2023年度に売り上げ60億円、2024年度には同100億円を目指す。

目標達成へ商品の拡充や消費者との接点拡大に力を入れる。今年9月末で12品だったオンラインストア向けの冷凍商品は、今年度末に20品以上に拡充。テレビ通販「ジャパネット」での販売を強化し、主にシニア層の獲得も狙う。完全メシの社員食堂への導入も積極的に働きかけていく計画だ。

ただ、同社は「あらゆる人が気付いたら完全メシを手に取っている」ような、さらに先の世界も見据える。そのためには何が必要か。まずは、やはり味の追求だ。例えば栄養素の味をスパイスなどで隠すと、どうしても味が濃く、辛くなってしまう。完全メシが目指すのは、通常品よりおいしいといえるレベル。藤野常務は「究極、お吸い物のようなシンプルな味付けの料理でも完全メシが作れたらいい」と話す。

価値を伴った価格であると、消費者に理解してもらうことも必要だ。完全メシは通常品に比べ高価格。通常品の「日清カレーメシ ビーフ」は税込289円だが、「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」は税込429円と100円以上高い(値段は2023年12月1日時点の日清食品グループオンラインストア)。商品名は似ているのになぜ高いのか分からない、という人が少なくない。

価値の訴求に向け、今後はさらにテレビCMやウェブ宣伝を打っていく。藤野常務は、SNS上で話題となった「カップヌードル」のCMや広告を連発したマーケティングチームの統括経験を持つ。「広告宣伝にはまだまだ力を入れていきたい。完全メシの価値を伝えられれば、この市場は圧倒的に拡大の余地がある」(藤野常務)。同氏は現在、日清食品のマーケティング部も管掌しており、カップヌードルの次は完全メシの「定番化」に手腕を発揮しそうだ。

業界のルール作りにも着手

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