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無印が過疎地のビルで「3フロア借り上げた」結果 無印良品はいかに「土着化」しているか(2)

東洋経済オンライン / 2023年12月10日 11時20分

子供にとって思い出深いのは校庭であろう。「火遊びはいけません」と、子どものときにたびたび注意された経験は誰でもある。公共の施設の小学校は特に火の扱いに厳しく、炎を見るのは理科実験室くらいだ。

だが、「もし、思い出の校庭で火遊びができたら、わくわくする」。古谷はそう考えて、校庭でのキャンプを提案した。相談を持ちかけた人々も、思いがけない提案に驚く。でも、どうせなくなる学校ならば火を焚いても大丈夫ということになった。

そして、近所の卒業生も集まり、無印良品が提供したテント11張りなどのキャンプ用品を持ち込んだ。閉校前の一夜を、かがり火と星空の下で語り過ごした。

イトーヨーカ堂の「フードコートに思い出がある」と言う人は少なくなかった。見晴らしのいい2階にあったフードコートは、35年以上にわたり、世代を超えた憩いの場だった。

これを事業に生かせないか。古谷たちは同じ場所に、「なおえつ良品食堂」を置くことを決めた。ここには、あえて無印のレストラン事業部を入れていない。地元の食材や飲食店の関連の商品で食を楽しんでもらいたいと思ったからだ。

目玉は、高校生以下に限定販売の税込み300円ラーメン。放課後にたわむれたり、勉強したりする場所が少ない生徒たちが、長居できるように値段も抑えた。もっとも、300円のラーメンを食べながら、倍以上の値段のスタバの限定品も飲む子たちもいる。

さらに、「OPEN MUJI」ではさまざまなイベントを行う。イベントがないときは学習スペースなど自由に使うことができる。筆者が訪れた際は、ここで高齢者向けの健康体操をしていた。高齢者らは広い店舗のウォーキングにも参加する。ただゆっくり、店内を歩くだけである。

雪国では冬の間高齢者は外に出ることが減り、運動不足となる。その解消に少しでもなればと始めたものだ。このように、店舗を置く地域の状況にあわせて、責任者の裁量で地元に合わせた商いが「個店経営」だというわけだ。

こうした地域に根ざした「個店経営」を目指した結果、大方の予想を裏切り、直江津店の初年度売り上げは目標の1.4倍になった。世界の無印でも5番目に入る規模だ。過疎化の進む街の、この成功がきっかけとなり、2023年10月には新潟の無印は7店舗となった。

変わりゆく函館の「夜景」

北海道函館市は、日本3大夜景の観光地として知られ、かつては30万を超える人が住んでいた。ところが今では、北海道でも最も人口減少が大きい。2015年には26万6000人となり、2023年には24万7000人に落ち込む見込みだ。

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