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独居の100歳女性、530キロを長距離移動した真相 ツアーナースの付き添いで神奈川から岩手へ

東洋経済オンライン / 2023年12月19日 12時40分

言われてみると足の付け根に違和感がある。すぐに地域の民生委員に連絡を取り、自宅まで来てもらった。確かに歩き方がおかしい。とりあえず病院に連れていきたいのだが、長く歩かせるのは危険だ。民生委員はその場で救急車を呼ぶことにした。

病院で診察を受けた結果、多江さんは左足の大腿骨頸部骨折と診断された。骨盤と足の骨の接続部分が骨折していたのである。手術が必要なケガだ。多江さんはそのまま緊急入院となった。

担当の医師は次のように説明したという。

「高齢になると痛みを感じる機能も衰えます。骨折してすぐは大きな違和感はなかったのかもしれませんが、このまま放っておくと、もっと大変なことになっていたと思います」

ご近所ネットワークがうまく機能したおかげで、多江さんは大事に至る前に入院できたようだ。ただ、これで万事解決したわけではない。多江さんの骨折事案はある意味、ここからが本番なのである。

山本多江さんは、関東大震災が起こった1923年(大正12年)生まれの100歳だ。下に2人の弟がいる、3人兄妹の長女として育った。生涯結婚することはなく、20代で行政書士の資格を取得し、長く相模原市に暮らした。

2つ年下の長男・山本健介さん(仮名)は現在も存命だが、その下の弟は10年前に亡くなった。

6月に多江さんが入院し、諸々の手続きを手伝ったのは遠く離れた岩手県に住む、弟の健介さんと、その娘、松本恵子(仮名)さんだった。

松本さんは入院までの経緯を次のように語る。

「一人暮らしをしてはいるものの、叔母(多江さん)は100歳ですから、年相応に弱っていたのだと思います。数年前に自宅の近所で警察官に保護されたこともありました」

買い物に出かけた先で、多江さんは車道に大きくはみ出して歩いているところをパトロール中の警察官に保護されたのだという。

「それ以来、私が叔母の自宅近所の民生委員の方とちょくちょく連絡をとるようになりました。“一人暮らしはそろそろ難しいんじゃない”と、言われていた矢先に、今回の骨折事故が起きたのです」(松本さん)

高齢者の骨折は認知機能の低下にもつながる

高齢になってくると、足腰の筋力が衰え、ちょっとした段差につまずいて転ぶことが増える。膝から上の大腿骨には、腰の骨との結合部分に細くなっている場所(頸部)がある。転んで尻もちをついたときなどに、ここを骨折することが少なくない。加齢のために骨粗鬆症気味の人などは要注意だ。

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