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急進する「EVモーターズ・ジャパン」とは何者か 中国企業と提携でEVバスを作る北九州の注目株

東洋経済オンライン / 2023年12月19日 11時40分

背景には、日本と中国、それぞれでの佐藤氏の実体験にある。

日本での転機は、2011年3月の東日本大震災。福島にあった自社のインバータ製造工場が、被災したという。

その後、当時の福島県知事や地元出身の政治家などが、「福島で電池産業の育成を目指す」という考えを示すと、佐藤氏は「新しい防災システム」という観点で、「非常時に移動電源車となるEVバスが、有力な産業に成長するのではないか」と考えた。

また、被災した鉄道路線の復旧見込みが立たない中で、BRT(バス高速輸送システム)をはじめとした都市交通システムの導入に注目が集まり、「ランニングコストを考慮すればEV化の可能性もある」と考えた。

一方、中国では東日本大震災が発生する前の2000年代後半から、EVバスの普及が進み始めていた。

筆者は当時、取材を重ねる中で、2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、2010年の広州・アジア競技大会という一大国家イベントを、中国政府はEVバスなども含めた「最新技術のショーケース」として位置付け、中国の経済力強化を国内外に強くアピールしていたことを実感したものだ。

中国政府はそうした一大国家イベントを基盤として、第12次5カ年計画(2011~2015年)の中で、環境やIT分野における革新的な技術開発を目指す方針を定めた。

EVについては、「十城千両」と呼ぶ国家施策を25都市に広げて、EVバスやEVタクシーの普及を狙ったという経緯がある。

そんな2010年代前半、佐藤氏は中国でEVバス等に関する研究開発を進めることになる。

佐藤氏によれば、2007年に日本と中国の政府間交渉による「環境・エネルギー分野における協力推進に関する共同コミュニケ」が、このプロジェクトに対する「大きな後押しになった」と当時を振り返る。

こうして佐藤氏は、日本では福島復興、中国では次世代技術開発という観点で、EVバスの開発に深く係わるようになっていく。

EVモーターズ・ジャパン設立の背景

EVモーターズ・ジャパンの設立は、2019年だ。佐藤氏は、設立の経緯を次のように話す。

「(日本市場も視野にEVバスを量産化する場合)保安基準として日本専用のボディ寸法が必要であり、また沿岸部の走行や凍結防止剤による塩害での腐食を予防し、(新車導入から)20年以上にわたって利用できるEVバスを日本専用に設計する必要がある。その場合は、限定した電池メーカーと商取引をする必要があるからだ」

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