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「次期装輪装甲車」選定に見る防衛予算の無駄遣い 国内生産で単価高騰、浪費される防衛費の実態

東洋経済オンライン / 2023年12月19日 11時20分

この選定で海外製品が選ばれた場合、国内生産されることになっていた。ところが、その国内生産企業が未定だったのだ。

本来、国内製造会社がパートナーとして参加していなければ、生産コストや後方支援・生産基盤については情報を出せるはずがない。それにもかかわらず、「経費についてはAMVが優位」と判断したのだ。

生産会社が未決定のまま予算要求

しかも予算が成立して本年度から執行されるべき時期である本年4月になっても生産会社は決まっておらず、未決定のまま来年度の概算要求でもAMVの予算が要求されている。無責任としか言いようがない。

パトリア社が国内生産会社を日本製鋼所に決定し契約を結んだというアナウンスは2023年9月になって行われた。だが同社には装甲車製造の経験がない。これが三菱重工であれば装甲車生産のためのラインやジグ(治具)、設備などを有しているから初度費(初期投資)は高くならない。だが日本製鋼所の場合は相当額の初度費が必要なはずだ。

来年度要求だけでも170億円ほどが見込まれているが、その初度費がどの程度になるかは明らかにされていない。おそらく初度費は何倍も高くなることが予想されるが、その分、実質的に単価が高騰することになる。つまり装備庁や陸幕は初度費がどのくらいになるのかも把握せずに、経費については「AMVが優位」と判断したわけだ。

ベンダーとしてはコマツの下請け企業群が担当するらしいが、少量であれば価格は高騰する。

また国内生産とはいうが、どの程度までコンポーネントを内製化するのかも明らかになっていない。部品を輸入して組み立てるのはアッセンブリー生産と呼ばれて、国内でコンポーネントを内製化して生産するものをライセンス生産と呼ぶ。

近年、国内生産は調達数が少ないこともあり、アッセンブリー生産が多い。だが、価格はオリジナルの2~3倍以上に上る事が多い。しかも単なる組み立てなので、技術移転は期待できない。国内企業に金が落ちるものの、国内生産は単に調達単価を押し上げるだけとなっている。

装備庁の「経費についてはAMVが優位」との判断がいかにいい加減かおわかりになるだろう。

諸外国に比べて3倍程度は価格が高いのが当たり前

そもそも、AMVの代理店であるNTKインターナショナル社は小規模な専門商社であり、装甲車両関連の実績もない。年に数百億円となる調達を担当するのも無理があった。おそらくパトリア社にとって今回の入札は日本市場参入のために経験を積むつもりで、契約が取れるとは思っていなかったのではないだろうか。

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